アレルギー・自己免疫疾患もカルシウム不足から
 神戸大学名誉教授・葛城病院名誉院長 藤田拓男

自己免疫疾患は免疫細胞の間の情報交換がうまくいかず、異物と間違えて自分自身の細胞を攻撃してしまうこと。この情報交換に重要な役割を果たしているのがカルシウムである。自己免疫疾患はカルシウムが不足して、甲状腺ホルモンが多量に出て免疫細胞にもカルシウムがたくさん入ってしまうと引き起こされるという。免疫とカルシウムの関係について探ってみた。


 免疫は人体に外から侵入してくるウイルスや細菌、異物に対して体を守る仕組み 

免疫という言葉が使われ出してから、すっかり変わってきました。疾病というのは伝染力が強く、一つの町の住民が皆感染して、荒れ果ててしまうというくらい恐ろしいもので、ペストやコレラ、天然痘ですが、大流行の時でも不思議にその病気にかからない人があり、ちょうど厳しい税の取り立てを免れる人がいるように、疾病から免れる一部の人がありました。

また、一度かかって助かった人は二度目の流行に出会っても免疫があって、その病気にかかりませんでした。ジェンナーがこの原理を使って毒性の弱い牛痘をわざと注射して免疫をつくったのは画期的なことで、今では天然痘は地上から消えたという勝利宣言が出されました。予防注射は面倒なものですが、自分だけでなく、他の人のためにも威力を発揮し、伝染病はすっかり減りました。しかし、予防接種がなかなか作れないエイズのような病気もまだあります。
免疫は人体に外から侵入してくるウイルスや細菌、異物に対して体を守る仕組みです。一度入ってきたものはよく覚え、自分の体で作られたものか、他から入ってきたものかを区別し、有害な異物は壊し、排除します。
そうした迎撃部隊に相当するのがT細胞、B細胞、巨大貪食細胞などであり、情報を交換しながらチームを組んでその働きを続けます。
このため、免疫細胞は携帯電話を持っていますが、そこでの電波の働きをするのがカルシウムです。


 免疫細胞の正常な働き欠かせないカルシウムの役割 

細胞の中はカルシウムが真空状態になっており(ほとんど存在しない)、それを取り巻く血液の中には細胞の中の10000倍のカルシウムがあります。細胞にはそれぞれ与えられた役割があり、各々の役割が果たせなくなると、様々な支障をきたします。そして、細胞が正常な働きをするためには、細胞への情報伝達が必要なのです。
従って、正常な細胞は真空管にたとえることができます。細胞中にカルシウムがほとんどない状態だから、情報伝達物質であるカルシウムに対して迅速に反応することができるのです。もしも、カルシウムの摂り方が不足して、副甲状腺ホルモンがたくさん出てくると、免疫細胞の中にもカルシウムがたくさん入ってしまって、細胞の中と外の差が少なくなり、情報をキャッチする力が弱くなってしまいます。時には混信が起こって誤った情報が伝えられることもあります。

アレルギーは免疫と裏表で、外からの異物に立ち向かって、これを排除するはずの免疫細胞やその作る抗体が強く反応しすぎて有害なことを起こすのです。
ペニシリンショックは有名な例で、抗原と抗体の反応が、気管支のけいれんを起こし、生命の危険を起こすこともあります。自己免疫疾患というのは、免疫細胞の間の情報交換がうまく行かなくて、異物と間違えて自分自身の細胞を攻撃してしまうことです。

慢性関節リウマチ、SLE(全身性エリテマトーデス)、血管炎など、いろいろな病気がこうして起こります。細胞の中でカルシウムが増えてしまって元に戻らないカルシウムパラドックスが、免疫細胞の間の情報交換を妨げ、混乱を起こすのです。

警察電話が混乱して、誤った情報が伝わり、犯人と間違えて関係ない通行人を逮捕してしまうというような、あってはならないことが自己免疫病です。細胞の中のカルシウムがさらに増えてくると、情報はますます混乱して、生活できなくなり、細胞自身が消えてしまうこともあります。エイズが恐ろしいのはT細胞という免疫細胞がウイルスのため死滅してしまうためで、免疫不全の有名な例といえます。
免疫細胞が死ぬ時には必ず細胞の中のカルシウムが増えてきます。細胞の中でカルシウムが増えることは、細胞死の最終共通経路と言われています。

カルシウムの欠乏が細胞の中のカルシウムを増やすというカルシウムパラドックスは細胞の生命にとって、大きな危機です。カルシウムを充分に摂っていれば、よぶんな副甲状腺ホルモンも出る必要がなく、免疫細胞の中にもカルシウムが増えることがなく、感染に対する抵抗力が保たれます。

(Medical Nutrition 37号より)


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