「アルコール性肝疾患」「肝硬変」の治療など、 幅広い肝障害へ予防効果。 【マリアアザミ(Milk Thistle) 】
マリアアザミ(オオアザミ)は肝機能改善作用が知られたハーブで、欧州をはじめ一部アジア諸国では医薬品として承認されている。4人に1人は肝機能障害があると言われる今日、肝機能改善機能を持った健康食品が数多く流通しているが、なかでもマリアアザミには数多くのデータが報告されており、他の追従を許さない。
 |
メディカルハーブとして利用実績2000年以上のマリアアザミ。 |
マリアアザミは、またの名をオオアザミという。学名はSilybum marianum(L.) Gaertn。キク科の2年草で南ヨーロッパ、北アフリカ、アジアに広く分布する。ヨーロッパでは伝統的に生薬としての利用法が伝わっており、すでに2000年以上もの歳月にわたり、メディカルハーブとして重用されてきた。生葉は今日、サラダにも使われている。
メディカルハーブとしては主に種子、葉が用いられ、ドイツでは種子の抽出物を精製したものが抗肝毒性薬「Legalon」(レガロン/マダウス社)として1968年に承認されている。マリアアザミ種子抽出物はsilymarin(シリマリン)と呼ばれ、フラボノイド類を中心に構成されている。シリマリン中の有効な化合物としては、silybin(シリビン)、silydianin(シリジアニン)、silychristin (シリクリスチン)が同定されている。この3種の化合物の化学式はC25H22010と共通しており、いずれも異性体としてエキス中に存在する。レガロンはドイツをはじめ、フランス、イタリア、ハンガリー、フィンランド、ルクセンブルク、エジプト、メキシコに加え、アジアにおいても中国、韓国、タイで承認されている。
シリマリンは肝再生を促進する作用が基礎研究で明らかにされている。さらに肝ATPを増加させることから肝細胞を賦活するとも考えられている。また肝臓でRNAやタンパク質の合成、エネルギー代謝を促進することが確認されていることなどから、肝機能賦活作用の作用機序が説明されている。また、抗酸化作用もシリマリンが持つ特性の一つだ。脂質過酸化酵素のリポキシゲナーゼに対し、シリマリンはこれを阻害して過酸化脂質の生成を抑制する。また活性酸素によるミクロソーム膜脂質の酸化を抑制することも報告されている。抗酸化作用の作用機序としては、リポキシゲナーゼの活性阻害に加え、活性酸素の直接的な消去、SOD活性の増強が考えられている。
 |
肝機能改善作用、NCCAM評価示す。 |
先月4日、米国のNCCAM(National Center for Complementry and Alternative Medicine)はマリアアザミに関するエビデンスレポートを発表した。
NCCAMのレポート「肝臓疾患及び肝硬変に対する影響と悪影響」は、マリアアザミの臨床効果は明確に確立されていないと指摘している。これによれば、「肝臓疾患の程度や病因についての不均質なスタディデザイン、少ないサンプル数、規格の差異、服用量・服用期間――に問題がある。有効性を示す報告がよく見られるが、一貫性はなく、それを証明するにはアミノ基転移酵素や肝機能テストなど一般的な評価指標による試験の積み重ねを要する」として、研究方法とレポートの質について指摘している。その上で「入手できたエビデンスでは、他の薬剤に比べて、マリアアザミが肝臓疾患に対して有効であるというには十分ではない。有効性が治療期間、または肝臓疾患の慢性度及び重度に関係するとも言えない。副作用は、因果関係によっていくらかのエビデンスが得られているものの、マリアアザミと関連づけるものはほとんどなく、一般的に副作用は少ない」としている。
 |
肝機能改善効果、肝炎、肝硬変など豊富な臨床試験。 |
NCCAMのレポートでは明確なエビデンスは示されなかったが、ドイツのコミッションEでは、マリアアザミを『approved herb』と評価している。コミッションEでは、マリアアザミ果実エキスの服用を、消化不良の訴えに認めている。またシリマリン含有率70〜80%に規格化された製剤については、毒性肝障害と慢性肝炎、肝硬変の治療を認めている。
マリアアザミに関する基礎・臨床研究は数多く報告されている。 臨床報告の多くのものは、肝機能改善効果を示したものだが、肝臓疾患でも肝炎、肝硬変、アルコール性肝障害、その他タマゴテングダケ中毒に対する解毒効果などが報告されている。
200名のアルコール肝障害患者に対するシリマリン420mgを4週間投与した試験で、シリマリン投与群はコントロール群と比較してGOT、GPT、γ-GPTがいち早く低下、ビリルビンやBSP試験の測定値は標準を示した。
1980年には、アルコール性肝硬変患者96名を対象としたレガロンによる延命効果が報告された。被験者のうちレガロン群は47名、プラセボ群は49名で、試験実施期間は4年間。試験期間中にレガロン群は5名が死亡、プラセボ群は14名が死亡し、死亡率に明らかな差が認められている。また慢性肝炎患者36名を対象とした二重盲検では、シリマリン420mg群はプラセボ群との比較で、GOT、GPT、γ-GPT及び血清トランスアミラーゼの測定値に明らかな低下が見られた。
平均41カ月にわたって実施されたアルコール性及び非アルコール性の肝硬変患者170名を対象とした二重盲検試験では、レガロン群87名に症状悪化を遅延させる効果が見られた。生存率はレガロン群が58%で、プラセボ群83名は39%となった。また、この延命効果は、アルコール性肝硬変患者でより顕著な結果が現れた。
解毒効果を示す臨床試験では、向精神薬の長期摂取による肝臓障害抑制について二重盲検試験が実施されている。向精神薬の長期摂取は、肝臓での代謝課程で発生する活性酸素によって肝臓障害を引き起こすことがある。この試験ではグループIとして向精神薬とのシリマリン併用、向精神薬とプラセボの併用の2群で検討。グループIIは向精神薬の投与中止後にシリマリンとプラセボで比較した。その結果、グループIIではシリマリン群、プラセボ群ともMDAレベルが低下したものの、治療薬を併用していたグループIでは試験開始後30日過ぎから差が現れ、90日後には有意差が現れた。これらのことからシリマリンには、薬物に対する肝臓障害保護作用が示唆された。
日本では馴染みの薄いハーブだが、一部メーカーが商品化している。主に飲酒習慣のある人に向けて販売されているが今後はCAMでの普及に期待がかかる。
|
■ 副作用・相互作用情報 ■
マリアアザミの使用量は、種子換算で1日12〜15g。抽出物であるシリマリンとしては1日200〜400mg(シリビン換算)。ドイツのコミッションEでは流通規格品を420mgを3回に分けて服用、6〜8週間継続することを推奨している。
安全性は非常に高く、大量投与による安全性試験、急性毒性、慢性毒性で安全性は確認されている。また生殖機能に関する影響も認められていない。医薬品承認されたレガロンは妊娠中・授乳中の女性に対しても禁忌としていない。
コミッションEが公表しているモノグラフの増補版には規格製品の副作用として、「ときおり緩やかに便通を促進する」とあるが、他は示されていない。他の薬剤との相互作用も知られていないとされている。
NCCAMが先月4日に公開したマリアアザミのエビデンス・レポートは、副作用について記している。これによるとマリアアザミの経口摂取では、胃腸のトラブルとして吐き気や下痢、消化不良、鼓腸、腹部膨満、苦痛、拒食症、腸習慣の変化がある。また頭痛、痒みや発疹、蕁麻疹、湿疹などの皮膚反応、無力症や不快、不眠症などの神経心理学上の現象、関節痛、鼻炎、アナフィラキシーなどが示された。
|
|
(Medical Nutrition22号より)
|