子宮内膜症、月経困難症など
  婦人科領域で臨床報告

 【フランス海岸松樹皮 (French maritime pine bark) 】

フランス海岸松の樹皮から抽出したプロアントシアニジンを主成分とする抽出物が、世界各国で幅広く利用されている。国内では一部の病院で臨床応用され、その効果が報告されている。今号は、婦人科領域での普及が期待されるフランス海岸松樹皮抽出物を紹介する。


 欧米で研究進む薬理作用、フランス海岸松の樹林とその樹皮。

フランス海岸松(French maritime pine bark、学名Pinus pinaster)は、フランス南西部のボルドー地方とピレネー山脈、スペイン国境の間の大西洋沿岸に生育する海洋性の松で、この樹皮の抽出物に抗酸化作用をはじめとする高い機能性が認められ、欧米で注目を集めている。

ホーファー・リサーチ社(スイス)が製造する抽出エキス「ピクノジェノール」(商標登録)が一般的に流通しており、このピクノジェノールを用いた基礎・臨床研究が近年活発に行われている。海岸松の食用での利用法は、古くはカナダのケベック地方で先住民族が樹液をお茶として飲んだと伝えられている。松の樹皮液は13世紀初頭に医薬品的な利用法も行われていたという記録がある。松の樹皮には、1535年冬に探検家ジャック・カルチェ(フランス)の探検隊員がカナダを探検中に、その大半が壊血病に罹り、先住のインディアンによってもたらされたAnneda pine樹液のお茶によって救われたとの逸話が残っている。1950年代に入り、当時ケベック大学客員教授のジャック・マスケリエ氏(ボルドー大学教授)がoligomeric procyanidines(OPC)の研究のなかで発見、フラバノールのグループに対してpycnogenolsと名付けた。その後Pycnogenolの登録商標を巡った法的な争いも見られるなど、その有用性が注目された。

フランス海岸松樹皮から得られたピクノジェノールには、60%以上のプロアントシアニジン(OPC)が含まれ、そのほか40種以上の有機酸が含まれている。これらフラボノイド特性を持つ低分子の抗酸化物質が複合的に働き、強力な活性酸素消去能を発揮する。過去30年以上にわたり、フランスをはじめ、米国、イギリス、イタリア、フィンランド、ドイツ、ルーマニア、日本の各国で研究が行われ、化学構造式や生理活性作用、安全性が検証されている。

「ピクノジェノール」を使用して得られた研究成果では、抗酸化作用、抗炎症作用、末梢血管拡張作用、血小板凝集阻止能、末梢血管抵抗減弱作用、結合組織の補強作用、ビタミンCの生体内作用に対する増強作用が報告され、薬理効果としては老人の脳血流障害の改善、動脈硬化症による末梢血流障害の改善、血栓予防、ADHD(注意欠陥多動障害)への改善・治療効果、糖尿病性網膜症、美白効果、鎮痛作用、不眠の改善・治療、こむら返りの治療、慢性疲労症候群の改善・治療、さらに足のムクミ、静脈瘤、花粉症や喘息などのアレルギー性疾患、眼精疲労、糖尿病、インフルエンザ、がんについて改善・治療の報告がある。糖尿病性網膜症に関しては、フランスで医薬品として認可されている。末梢血管拡張作用と血栓予防、ADHDへの改善・治療効果は米国で特許が取得されている。

抗酸化作用についてはビタミンEの50倍、Cの20倍以上という報告が出ている。また血小板凝集抑制作用について報告したドイツ・ミュンスター大学のピーター・ロドワルド教授(薬化学)は、その薬理研究によってピクノジェノールの抗酸化作用による血小板凝集抑制能を「アスピリンを超える」と高く評価している。ロドワルド教授とアリゾナ大学の共同研究によれば、ピクノジェノール100mgの経口投与では出血時間を長引かせることなく血小板凝集を抑制したが、アスピリンで同等の血小板凝集抑制を得るには500mgが必要となり、出血時間もピクノジェノール100mgに比べて伸びたとしている。

 婦人科領域、日本での臨床国際的な関心を集める。

市場に登場以来、活性酸素消去能や末梢血管拡張作用、血栓予防が注目されてきたが、遅れて上陸した日本では独自の研究が進められ、特に婦人科領域での臨床報告は国際的な関心を集めた。

小濱隆文医博(恵寿総合病院院長)はピクノジェノールを子宮内膜症、月経困難症に臨床応用し、その薬理作用として鎮痛抑制作用、血小板凝集抑制作用、子宮および付属器の炎症・癒着の改善効果――を見出した。

今年11月4日の日本補完・代替医療学会で小濱氏は、最新の臨床報告を行っている。試験に使用したフランス海岸松抽出物はピクノジェノール。1カプセルあたりピクノジェノール15mg、オリーブ油205mg、乳化剤30mgを含有したソフトカプセルを1日1粒、月経終了日から月経第3周期終了時まで連続投与した。月経痛を有し、血中CA-125値が35U/ml以上、挙児希望の子宮内膜症20症例を対象とした試験では、月経痛スコア平均値が投与前の65から31に低下した。また卵巣がんの検査にも使用され子宮内膜症でも有効な腫瘍マーカーCA-125は投与前の81.2から40.9に低下した。この試験では20症例の全症例で排卵周期が保たれ、さらに3カ月以内の妊娠も4例あった。この結果について小濱氏は「ピクノジェノールは子宮内膜症に対して月経痛を軽減、妊孕性を抑えることなく子宮内膜症を改善する」と報告した。

一方、原発性月経困難症20症例に対する同様の試験方法での検討では、月経痛スコア平均値が72から38に低下した。これは鎮痛剤内服で「やや軽減」「軽減」というレベルから「ときに鎮痛剤を内服」というレベルに低下したことを示す。小濱氏は現在、月経痛に関する多施設二重盲検法による検討を計画しているという。

子宮内膜症は、閉経期前の女性に12〜15%の割合で見られ、出産可能年齢に多く、卵巣ホルモン依存性、閉経後に消失するなどの特長があり、米国で50万人、日本では20万人が子宮内膜症であるとされる。また生理痛の悩みを抱えている女性は8割に及ぶといわれている。

日本では小濱氏の報告によって、補完・代替医療(CAM)に関心のある婦人科医療従事者の関心を呼んだが、小濱氏はこのほかにピクノジェノールによるパイロット臨床試験を実施しており、疼痛を訴える男女886名に対する報告も行っている。このなかでは五十肩280症例中231の改善例(83%)、肩こり300症例中250の改善例(83%)、椎間板ヘルニア28症例中24の改善例(83%)というデータが報告されている。

日本での臨床応用はスタートしたばかりだが、今後、婦人科領域を中心にCAMに採り入れられる代表的なサプリメントとなる可能性も高い。


■ 副作用・相互作用情報 ■

フランス海岸松樹皮抽出物を規格化したホーファー・リサーチ社の「ピクノジェノール」の安全性に関しては、過去30年間にフランスをはじめ、イギリス、米国、ドイツ、イタリアの研究者によって確認されてきており、副作用や相互作用の情報はほとんど見られない。

ピクノジェノールの製品規格は、フランス海岸松樹皮抽出物(ポリフェノール)が92%、水分8%以下。その構成成分として、プロアントシアニジンが60%以上、カテキンモノマー及びフェノールカルボン酸が32%以下となっている。体重1kg当たりの1日の摂取目安量は1mgで、日本人(60kg)では60mg/日が目安となる。

軽微な副作用については886人を対象にパイロット臨床試験を実施した恵寿総合病院の小濱隆文院長が報告している。886例中に現れたものでは、体幹性発疹1、散発性発疹2、ニキビ4、起き抜けのめまい1、胃もたれ及び胃痛32、便秘10、下痢2(重複を含む)――となっている。これらはいずれも軽微で、またピクノジェノールとの関連は確認されてはいない。ピクノジェノールを解説した書籍「ピクノジェノールの癒し」(旭丘光志著、DHC刊)で小濱氏が語ったところによると、最も多く見られた胃もたれと胃痛は、食事直後に飲むようにすれば防ぐことができるという。また体幹性発疹の1例については「松に対するアレルギーと思われ、一般的には大丈夫」とコメントしている。また、ドイツ・ミュンスター大学のロドワルド教授は、アスピリンはACE阻害剤の効果を減弱させるが、ピクノジェノールはACE阻害剤の作用に影響を与えないとしている。

(Medical Nutrition)


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