「尿路感染症」に予防効果
 歯周病菌やH・ピロリ菌抑制も

 【クランベリー(Cranbbery) 】

北米原産の"クランベリー"は、米国ではジュースやジャムなどに加工され、一般家庭にも浸透したポピュラーな食材だ。民間伝承的には尿路感染症への作用が知られ、エビデンスも確立しているが、最近の研究ではヘリコバクター・ピロリ菌の抑制作用も確認され、注目を集めている。


  酸性化による尿路感染症治療・予防で古くから利用。

クランベリー(学名:Vaccinium macrocarpon Ait.またはV.oxycoccos L.)は、ブルーベリーやコンコードグレープと同様の北米原産の代表的なフルーツ。ツルコケモモ属の小果樹の実で、ヨーロッパにも自生するが、米国では特に人気が高く、ジュースやジャムに加工されるほか、料理にも利用される食材だ。民間伝承的に古くから尿路感染症の治療に利用されており、その機能性を利用したサプリメントなども販売されている。

メディカルハーブとして利用される製品の流通規格ではキナ酸0.9%以上、クエン酸0.9%以上、リンゴ酸0.7%以上、キナ酸/リンゴ酸が1.0以上(USP-NF)となっている。このほかブドウ糖、フラクトースなどを含有する。

クランベリーの生理活性機能で代表的なものとして、尿路感染症(腎盂炎、膀胱炎など)の改善作用が知られており、現在までに数多くの基礎研究が行われ、泌尿器科における臨床試験も実施されている。そのメカニズムとしては、クランベリー中のキナ酸が腸管吸収され、肝臓で安息香酸に代謝、これにグリシンが加わり馬尿酸に変換される。酸性物質の馬尿酸が尿中に排泄され、尿のpHを低下させ、尿路感染菌の尿管への付着を抑制すると考えられている。

 含有成分で抗酸化作用のあるプロアントシアニンにも注目が集まる。

しかし、これだけでは予防や改善効果の説明が十分ではないため、尿の酸性化だけでなく、他の要因があるのではないかと指摘されている。その一つとして含有成分で抗酸化作用のあるプロアントシアニンが注目されており、大腸菌など尿路感染菌の繊毛が上皮細胞に付着・定着するのを抑制するとの考察が示されている。また、尿路感染症に関しては、尿路変更やカテーテル留置に伴う慢性化が問題となるが、慢性尿路感染症に対しても効果があることから、感染菌が酸性する多糖が形成するバイオフィルムを抑制すると考えられており、この作用にもプロアントシアニンが関与しているのではないかと考えられている。

クランベリー摂取による尿の酸性化について1923年に、尿pHが6.4から5.3に低下、馬尿酸が600%増加したとの報告がある。弱アルカリまた健常者、尿路ストーマ患者を対象とした実験ではクランベリージュース飲用2時間後にpHの有意な低下が示されている。

米国では66年に、60症例の急性尿路感染症に対して実施した臨床試験が報告されている。クランベリージュース3週間の飲用で、有効率は53%。また94年には、無作為二重盲検対照試験が報告されている。Avornらは、クランベリージュースを高齢女性に1日300ml、6カ月飲用させ、その結果クランベリー飲用群(72例)はプラセボ群(81例)に比べて細菌尿、膿尿ともに低く、尿路感染の予防効果があると報告した


 菌付着抑制作用が歯周病・歯肉炎、胃潰瘍の予防に。

クランベリーはまた、歯周病・歯肉炎予防も期待されている。 イスラエルのテル・アビブ大学の報告によると、クランベリーは菌付着抑制作用により、連鎖球菌やアクチノミセスの歯への付着を抑制し歯垢の形成を妨げる。

テル・アビブ大学ではさらに、歯周病に関連するバクテリアが口腔内で歯や他のバクテリアに付着するのを抑制するとした。

またテル・アビブ大学の最新報告では、ヘリコバクター・ピロリ菌への作用が確認されており、注目を集めている。これは、含有成分のタンニン、プロアントシアニンが胃内部の粘液をH・ピロリ菌から守るというものだ。

米国先住民の民間伝承薬だったクランベリーは、研究の積み重ねにより尿路感染症に対するエビデンスが確立され、米国の泌尿器科では積極的に利用されるようになっている。ここにきて細菌の上皮付着が引き起こす症状に対して広く適用できる食品素材へと開花しつつあり、CAM(補完・代替医療)での出番も広がりそうだ。


■ 副作用・相互作用情報 ■

米国NIHは1998年、尿路感染症予防効果を評価しており、「入手可能なエビデンスに基づくとクランベリージュースは、尿路感染に罹りやすい集団の尿路感染症の予防としては勧められない」としている。NIHではクランベリー製品の販売・普及を行う企業から参考文献やデータを取り寄せ、尿路感染に罹りやすい集団でクランベリージュース/製品を評価(ランダム化評価試験・準ランダム化評価試験)したところ、「信頼に足るエビデンスは得られず、クランベリージュースは試験中に多数の脱落、中止者があったことから長期使用の服用には受け入れられないかもしれない。しかし、クランベリーカプセルのような他の製品ではもっと受け入れられやすいのかもしれない」としている。

現在のところクランベリーに関する相互作用に関する情報はなく、また臨床的に尿を酸性化する薬剤がないため、尿路感染症に対する有用性は高いと考えられる。しかし、NIHが指摘するように関連した転帰を調査し、適切にデザインされた試験をさらに実施することが必要だ。

(Medical Nutrition20号より)


BACKSITE TOPPAGE TOP