WHOも承認、ペルーの国策ハーブ
 【キャッツクロー(Cat's claw)】

アマゾン原産の新進気鋭のハーブ"キャッツクロー"。科学的根拠の構築は緒に就いたばかりだが、ペルーが国を挙げて栽培を推進するなど注目度は高い。キャッツクローを巡る研究動向と周辺の話題を紹介する。


 免疫強化作用で知られる、代表的なペルリアン・ハーブ

キャッツクロー(Cat's claw)はペルー原産のアカネ科の植物で、学名Uncaria tomentosa (Willd.)DC.。薬用部位には樹皮や葉が用いられる。特有のものを含めアルカロイド類が含まれており、リウマチ改善や抗炎症作用、抗アレルギー作用、免疫増強作用などが知られている。また漢方で「釣藤散」の薬味として利用される釣藤鈎はU.tomentosaに最も近い植物と考えられている。

歴史的には、今は滅亡したインカ帝国の時代から先住民族によってリウマチなどの痛みに対する伝承薬として利用されてきた。自生地においても1haに数本しか生ないため、ペルー先住民の間では「幻の樹木」として珍重されてきたという。現地では薬用部位として用いられる樹皮を煎じて飲用する利用法が伝わっている。有用成分としてはアルカロイド、トリテルペン、キノビック酸グルコシド、ポリフェノール、プロアントシアニジンの含有が知られている。

含有成分と薬理作用の関係については現在も研究が進められているところだが、これまでイソテロポディン、テロポディン、イソミトラフィリン、ミトラフィリン、イソミントフィリン、リンコフィリン――の6種のアルカロイドが同定されている。これらのうち、特にイソテロポディンはキャッツクローで特異的に見られるもので、免疫強化作用が知られる。これらのアルカロイドによる複合的な働きやキノビック酸によって、炎症的な痛みを伴うリウマチ、神経痛、腰痛、関節痛や片頭痛などの発作的な痛みに作用すると考えられている。

 米国では抗がん作用や抗炎症作用が報告されるなど、国際的に関心高まる

欧米では樹皮粉末や熱水抽出エキス、さらにこれらを混合したものを打錠、ソフトカプセル、チンキなどに加工し、ハーブ・サプリメントとして利用している。オーストリアとドイツでは医薬品として認可を得ており、抗炎症薬「クラレンドン」として流通している。

また原産国ペルーではアルベルト・フジモリ大統領によって、産業価値が見出され、95年には人工的に計画栽培されるようになった。これは「フジモリ計画」と呼ばれる国家プロジェクトで、その背景には貧困な現地住民の現金収入源となっている麻薬(コカ)栽培をキャッツクロー栽培に切り替えることで、麻薬撲滅と貧困解消を図るねらいもある。

近年米国では、キャッツクローに抗がん作用や抗炎症作用が報告され、サプリメント市場で人気を得ている。日本では96年頃から一部のメーカーによって製造販売されているものの、認知度はまだ低く、むしろ変形性膝関節症に対応するグルコサミン健康食品に副素材として配合されるケースが多い。先頃、聖マリアンナ医大の研究グループによって抗炎症作用が報告されたほか、臨床試験も実施されていることなどから、補完・代替医療的な利用法が注目されつつある。

また、白血病、白内障の治療に対する効果も期待されている。昨年10月、ペルーの全国紙が伝えたところによると、チェルノブイリ原発事故の後遺症に悩む患者150名に対してキャッツクロー(凍結乾燥錠剤)を6カ月間投与した結果、9割以上の患者に免疫活性を示す各種パラメーターの上昇、腫瘍細胞の縮小・消失が確認されている。研究を発表したウクライナ医科学アカデミーではHIV感染者34名についても検討しており、CD4細胞の防御に効果があったとしている。


 薬理学、毒性学、代謝学など急増する学術報告

関心が高まりつつあるキャッツクローではあるが、研究は緒についたばかりで、コミッションEなど代表的なハーブ論文集には記載がないこともある。

安全性に関しては、医薬品として用いられているクラレンドンで、毒性試験をはじめ臨床試験が報告されており、安全性が確認されている。またハーブそのものに対しても1994年にはWHOが副作用のない抗炎症剤として認めている。

ここ数年でキャッツクローエキスとして報告された学術報告には、TNF-α産生抑制とラジカルスカベンジ作用、IL-1、IL-6産生への刺激、キャッツクロー中のペンタサイクリックオキシドールアルカロイドによるヒト内皮細胞でのリンパ球放出誘発、抗炎症作用、ヒト腫瘍細胞でのアポトーシス誘発と増殖抑制、抗変異誘発――などが検討されている。またキノビック酸グルコシドやトリテルペンの新規成分なども発見されており、薬理学、毒性学、代謝学など様々なアプローチが進められているところだ。

日本では総合医科学研究所によって臨床試験が実施されたことで消費者の関心が高まり、医療従事者が臨床応用するケースも見られる。

ペインクリニックや鍼灸治療院、カイロプラクティックなどで補完的に利用するケースが増えているようだ。


■ 副作用・相互作用情報 ■

キャッツクローの研究は70年代から実施されているが、作用機序は明らかではなく、臨床試験例が少ないこともあって、副作用・相互作用情報は、これまで報告されていない。

用量についても確立されておらず、ペルーでの用法用量や主成分の含有量などをもとにメーカーの裁量に委ねられているのが現状だ。一般に健康維持を目的とした場合には樹皮として1〜2g、治療目的では同2〜10gである。抽出エキスでは、抽出法によって成分の含有量が異なるため、一様ではない。キャッツクローエキスを供給する(株)皇漢薬品研究所の薬剤師・早川明夫氏によると「樹皮をお茶として用いた製品にはキザミ2gを配合している。粉末と濃縮エキスの混合原料の場合、当社では1日摂取目安量として100〜300mgと考えている。感触としては少し減らしても、効果が期待できるだろう」とする。リサーチ会社の調査では禁忌として、降圧剤との相互作用の可能性が指摘されている。また早川氏はこれに加えて、ワルファリンなど血液凝固阻害剤との併用を避けるべきと語る。

参考までに、オーストリアとドイツで医薬品として承認されている「クラレンドン」では、キャッツクロー(根)を20gを砕いて1lの水(80℃)で45分間加熱、10分間冷やしたものをろ紙で漉し、さらに水1lを加えた煎じ液を使用する。成人では60mlを同量の湯に加えて朝の空腹時に飲用する。

クラレンドンの適応症は、(1)初期の炎症性疾患、特にリウマチ、(2)免疫系の機能異常に伴う疾患、(3)ウイルス感染により生じた疾患、(4)化学治療、放射線治療などの腫瘍治療の補完と治療の増強、(5)花粉症や喘息などのアレルギー疾患、(6)多くの自己免疫疾患、特に神経からくる皮膚炎――とされている。禁忌として、妊娠または授乳期の女性、3歳以下の幼児、骨髄移植が計画されている白血病患者、臓器移植の計画がある患者、免疫を抑制している患者――。副作用として、自己免疫疾患またはがんでは、2週間以上の便秘または下痢が起こることが示されている。医薬品との併用で、相互作用は報告されていないが、クラレンドンには強力な免疫調節作用があるため、化学療法の開始前2日間、治療後2日間の使用、またホルモン療法などの異種タンパクを使う治療には併用を避けるべきだ。

■ 国内での基礎・臨床研究 ■

腰痛・神経痛に70%の改善率

キャッツクローの研究は、70年代から始まった。逸速く医薬品としての利用価値を認めたDr.ケプリンガーは、米国で用途特許を取得し、オーストリアとドイツで医薬品として開発した。

国内には当初、免疫強化作用が公開されたが、総合医科学研究所によって腰痛・神経痛に対する二重盲検試験が実施され、これを契機に一般からの関心が高まった。

総合医科学研究所の梶本修身氏らは、腰痛または神経痛の患者24名を2群に分け、1日3回食後に1回1粒(キャッツクロー150mg)を与え、安静時の痛み、動作時の痛み、圧痛など9項目を評価した結果、叩打痛を除く全ての項目でプラセボに対して有意に痛みを改善した。評価が得られた20名では70%の改善効果が見られた(図参照)。

一方、基礎実験では、3月の日本薬学会で鈴鹿医療科学大学の富田雅弘氏らが鎮痛・抗炎症作用をマウスで検討し、エタノール抽出分画に有用性を認めている。また7月の日本炎症学会では聖マリアンナ医科大学難治研の岡村由布子氏がin vitroでの抗炎症作用を発表。ヒトマクロファージ系の細胞のサイトカイン産生を抑制し、かつ繊維芽細胞様滑膜細胞の増殖を促進することを示した。

(Medical Nutrition 19号より)


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