欧米では、風邪の常備薬。売れ筋No.1のハーブ「エキナセア」
 【エキナセア(Echinacea)】

活況を呈する米国のハーブ産業にあって、96年以来、常に売れ筋トップを維持するハーブが、免役賦活作用で知られる「エキナセア」だ。日本では、栄養補助食品に関する規制緩和の流れを受けて話題となったが、欧州や米国での一般的な信頼と比べると、認知度も低く、普及していないのが現状だ。欧米では「風邪の常備薬」として浸透しているエキナセアを紹介する。


 米国から広がった「風邪にエキナセア」

サプリメントをはじめとするハーブ製品の売上げが年率20%を越える成長を遂げている米国では、建国以前から利用され続けている「エキナセア(Echinacea)」が、ハーブ売上げ調査が始まって以来、売れ筋ナンバー1に君臨している。

エキナセアはキク科の植物で、別名Purple cone flower。アメリカ先住民が約400年前から、歯痛や喉の痛み、風邪、伝染病などの治療に対して経験的に利用し、伝承してきた。ヨーロッパからの移民にも、その利用価値が広まり、1870年代には、先住民からエキナセアの有用性を学んだ町医者H.C.F.Meyerによって家庭常備薬として製品化されていた。エキナセアの普及を目指したMeyerは、自分の主張するエキナセアの有用性が当時の米国製薬協会会長らに認められなかったことから、ガラガラヘビに自ら噛まれて効果を証明しようとしたとの逸話が残っている。その後全米で評価されるようになり、19世紀末にはヨーロッパに伝わり医薬品として広く普及した。それからさらに1世紀が過ぎ、98年の規制緩和を経て、ようやく日本でも販売されるようになった。米国とカナダの大西洋流入河川流域に自生するこのメディカルハーブは、現在ではその需要の高さからヨーロッパでも栽培されている。

 感染症に幅広く適用

系統学的区分では、キク科のエキナセアとして9種および2種の変種が分類されている。そのうち、薬効が確認され、メディカルハーブとして利用されているエキナセアは、Echinacea purpurea、Echinacea pallida、Echinacea angustifoliaの3種類が知られている。それぞれの種によって含有成分は異なり、また同種のエキナセアでも、その利用部位によって内容成分は異なる。ドイツ保健省のコミッションE(現在のBfArM)では、「エキナセア・プルプレアの地上部」あるいは「エキナセア・パリダの根」を薬用として認めており、一般的にはこの2つがメディカルハーブの原材料として使用されている。代表的なエキナセア製剤としてマダウス社(ドイツ)の「エキナシン」が知られるが、これはエキナセア・プルプレア地上部の搾汁濃縮エキスだ。一方、原産国の米国では、エキナセア数種を混合したサプリメントが多く見られる。

ドイツの植物治療薬指針及び治療実績では、風邪やインフルエンザの予防といった免役賦活作用、頭痛、喉の痛み、鼻炎、気管支炎、咳や発熱の緩和、免疫力の弱い小児の気管支感染、腸内感染の予防・治療、抗生物質との併用による感染の再発率の低下、季節の変わり目や冷暖房の利き過ぎによる鼻粘膜の乾燥、栄養不良、旅行中の食生活の変化、ストレス、強い紫外線、短期または長期の化学合成剤の投薬などによる免疫機能低下の改善、外傷の治癒、新生組織の増殖活性――が記載されている。

冒頭のように、エキナセアは数あるハーブ製品のなかでも、高い人気を得ている。ドイツでは、医薬品販売額1750億円のうち、「エキナシン」の注射薬などを含めて46億円を売り上げる実績もあるほど、家庭の常備薬として普及率の高い医薬品となっている。風邪やインフルエンザの予防が最もポピュラーな利用法として受け入れられており、風邪の引き始めや喉の痛み、気管支炎、咳などに手軽に用いられている。サプリメントとしても同様の生理作用を期待して利用されるケースが多いが、近年の研究によってより免疫賦活作用に着目した抗生物質的な利用が行われるようになった。

 数多くの診療科目で

エキナセアの含有成分のなかで、重要なものは、高い揮発性を持つオイルやアルキルアミド、イソブチルアミド、ポリイン、ポリエン、多糖類、糖タンパク、シコリック酸、カフェ酸誘導体などとされている。

薬理作用の研究は、1930年代からドイツを中心に盛んに実施されるようになった。作用メカニズムについては、いまだに不明な部分を多く残すものの、米国先住民の間で万能薬として利用されてきたこのメディカルハーブの生理活性作用の多様性が証明されつつある。

臨床医学的研究としては、ウイルスやバクテリア、菌類、原生動物など広い範囲にわたり治療効果を示すことから、感染症に対する研究が進み、感染症のプロセスのなかでヒアルロン酸を分解する酵素ヒアルロニダーゼの活性を抑制する抗ヒアルロニダーゼ作用が研究の初期段階で確認された。また、傷の回復にも利用されてきたことから血液凝固作用も検討され、繊維芽細胞の増殖を促進することが確認されている。

さらにエキナセア製剤中の配糖体エキナコサイドには、インターフェロン様の作用があることが確認されている。これまでの研究で、マクロファージを誘発して活性化し、インターロイキン1やインターフェロンβをつくる働きが促進されることが明らかなっている。

ドイツでは、泌尿器科、婦人科、内科、皮膚科などでエキナセア製剤を治療に用いており、臨床例としてもカンジダ症や前立腺炎、膿痂疹、呼吸器感染症、扁桃腺炎などに適用範囲を拡大している。治療に使用される製剤はチンキが多く、またホメオパシーでもポピュラーな製剤となっている。

コミッションE モノグラフ(植物治療薬指針)
エキナセアの種類 エキナセア・プルプレア
Echinacea purpureae herba
薬理作用エキナセア・パリダ
Echinacea pallidae radix
使用部分 開花時の新鮮な地上部及びその製剤 新鮮な根又は乾燥根並びにその製剤
適用 内服……気管、尿路部分の再発性感染の治療の補助
外用……皮膚表皮の外傷
インフルエンザ様感染の治療補助
禁忌 外用……知られていない
内服……結核、白血病、膠原病、多発性硬化症等の進行性の全身疾患
注射……菊科植物に対しアレルギーがある場合、妊娠時。
参考:糖尿病患者への注射は代謝を悪化させることがある。
結核、白血病、膠原病、多発性硬化症、AIDS、HIV感染の進行性の全身疾患及び自己免疫疾患
副作用 外用、内服ともに知られていない。
注射……投与量により悪寒、発熱、吐き気、嘔吐をもたらす場合がある。
知られていない。
処方量 他に特別の指示がない場合は以下による。
 
内服:6〜9驕^日の搾汁液及びそれに相当する製剤。
注射:疾病の様態と程度、並びに製剤の特徴に基づき個別に決める。
外用:搾汁液の15%以上を含む半固形製剤。
他に特別の指示がない場合は以下による。
 
50%エタノールで抽出された乾燥エキス(7〜11:1)から調整した50%エタノールチンキ(乾燥エキス:チンキ=1:5)→
生薬 900mgに相当する量を処方。
継続した投薬期間 a)注射:3週間未満
b)内服:8週間未満
8週間未満
薬理作用 動物試験、臨床試験:
エキナセアの製剤は経口投与、注射にて免疫活性を示す。
白血球並び脾臓細胞の数を増やし、人顆粒球の食作用を活性化する、及び発熱をもたらす。
動物試験:根のアルコールエキスはCarbon-Clearance-Testにおいて2.2因子の炭素粒子の減少率を高める。
インビトロ:食細胞数の増加

― 副作用・相互作用情報 ―

服用量は体重68kgの成人をベースとすると、急性疾患に対して1日に3回300〜500mgを、健康維持や予防目的では同100〜250mgとされている。服用期間に関して、研究者の意見が分かれるところだが、ある程度継続した後は一定の休息期間を置くこと、また必要な場合だけ摂取することを勧める意見がある。最も適切な利用法としては、6〜8週間の使用後は1、2週間の休息期間を置くとよいとされる。

これだけ普及したハーブでありながら、エキナセアと医薬品を併用した場合の相互作用に関する報告は、現在のところ見られない。これは、欧米では薬歴管理が徹底されていること、医薬品やサプリメントに関するエデュケーションが進んでいることなどがその主な理由として考えられる。

相互作用ではないが、コミッションEでは、内服での禁忌として、「結核や白血病、膠原病、各種硬化症、AIDS、HIV感染、自己免疫疾患などの進行性疾患への使用は避ける必要がある」としている。注射液は、「用量により冷感、短期の発熱、吐き気、嘔吐などの症状が現れることがあり、またキク科植物に敏感な人には希ではあるがアレルギー反応が現れることがある。妊婦に使用しない。糖尿病患者に経口投与すると、代謝状態が悪化する恐れがある」としている。このほか、皮膚炎に関して実施されたパッチテストで陽性反応が現れたとの報告がある。

(Medical Nutrition 16号より)


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