がん予防・コレステロール低下のスタンダード“ハーブ”
 【ガーリック】

身近な食材ガーリック(ニンニク)に、医薬品として承認されるほどの生理活性作用があることをご存じだろうか。ドイツではガーリックパウダーが循環器系疾患の予防薬として流通しており、米国ではUSP(米国薬局方)への収載に向け、検討が進められている。今回は、ガーリック・サイエンスの最新動向を追う。


 有用成分の謎、解明進む

ネギ科の多年草であるガーリック(学名:Allium Sativum L.)は、その鱗茎が古代から食され、スタミナをつける食品として注目を集めてきた。そのガーリックは近年、科学のメスが入れられ、有用成分の同定やメカニズム解明に向けて研究が進められている。

米国では90年、NCI(国立がん研究所)によって食品の機能性を科学的に実証する「デザイナーフーズプログラム」がスタートし、そのなかでガーリックは研究対象として筆頭に挙げられた経緯がある。残念ながら、同プログラムは提唱者で研究の中心的存在であったDr.ピアソンがNCIを離れたことで頓挫したが、がん予防が最も期待される食材としてフードピラミッドのトップに掲げられたことで、ガーリックへの関心は米国国民の間に広まった。

また、ヨーロッパのハーブ業界団体ESCOPで承認している薬理作用は、抗菌、抗真菌、脂質低下、血小板凝集阻害、出血や凝固時間の延長、繊維素溶解化活性の強化などである。この他に、これまでの研究で免疫調節作用、がん抑制作用が知られており、その有用成分として水溶性の有機イオウ化合物が注目されている。

 水溶性イオウ化合物が有望

98年11月に米国カリフォルニア州で開かれた第3回ニンニク国際会議では、アリシンに代わる有用成分としてS-アリルシステインなどの水溶性イオウ化合物の有用性が明らかにされた。

従来ガーリックの有用成分の筆頭とされてきたアリシンは、強い抗菌作用、抗酸化作用が確認されているものの、血中から検出されないことから、研究者の間では体内での生理活性はないのではないかとの疑いが持たれていた。アリシンは、ガーリックに含まれるアリインが酵素アリナーゼによって生じる成分で、分解しやすく、生ニンニク特有の刺激臭の元にもなる。

一方、水溶性のイオウ化合物であるS-アリルシステインやS-メチルシステインなどについては同国際会議においても、循環器疾患の予防効果、発がん抑制効果、ヘリコバクター・ピロリ菌に対する抗菌作用などについて報告が相次いだ。NIH(国立衛生研究所)の研究で過去には中国山東省で実施された疫学調査があり、毎日ガーリックを食べる地域と食べない地域では胃がんの発生率に11倍の差があることが報告されていた。これを裏づけるものとして、同じく山東省で実施された追跡調査では、ガーリックを多く摂取する胃がん発生率の低い地域ではピロリ菌感染率が低く、前がん状態にある人も少ないことが明らかにされた。

ガーリックの機能のなかで最も期待されるがん予防効果については、こうした胃がんや大腸がんに対する疫学調査や動物実験によって予防効果ありとする報告が多数存在する。そのメカニズムについて、ペンシルベニア州立大学栄養学部のジョン・ミルナー博士はニトロソアミンの生成抑制、発がん物質の修飾・解毒促進、DNAの修復促進、免疫賦活、細胞増殖の抑制などを挙げる。また基礎研究では、ガーリック中のS-アリルシステインやジアリルスルフィドによる食道がんや大腸がんのイニシエーション段階の抑制、S-アリルメルカプトシステインによる前立腺がんや乳がんの細胞増殖の抑制、さらに発がん物質の毒性抑制や発がん抑制などが示されている。

また、コレステロール低下作用についても含有成分中のスピロスタノールサポニンなどステロイドサポニンがLDLコレステロールを有意に低下させることが新たに報告されている。ガーリックの摂取は肉体的なストレス、つまり疲労に効果があるといわれ、これまでの研究で確認されているが、これについても肉体的ストレスのみならず精神的ストレスを抑制する効果があることが最近の研究で確認された。

 世界で最も普及したメディカルハーブのスタンダード

古代エジプトでピラミッド建設の労働者に支給されていたというガーリックは、その後ユーラシア大陸を経て南米にまで伝わった。世界中で食されるまでに各国の食文化に溶け込んだ要因は、その多彩な機能にあるようだ。

代替医療など全人的医療への関心が年々高まりを見せる日本でも、ガーリックへの期待は高まっている。今年1月に開催された第6回日本未病システム学会では、ガーリックに関するシンポジウムも行われ、抗酸化や免疫調節、学習機能、がんの化学予防が報告された。世界で最も広い範囲で利用されるハーブガーリックが医療従事者の間で再評価されている事実は、今後日本でも生活習慣病などの一次予防にガーリックが利用される可能性を示している。

― 相互作用情報 ―

「ワーファリン服用とガーリック・サプリメント」
ガーリックに関しては、過去20年間に2000を越す学術報告が発表されており、機能性研究は近年急速に進展している。古代エジプトから全世界に広がった経緯から見て、その安全性の高さが伺えるが、高い機能性を持つだけに医薬品との相互作用には注意も必要だ。
 
ドイツのE委員会並びにESCOP(European Scientific Cooprative on Phytotherapy)は他剤との相互作用はないとしている。しかし、WHOでは「ワーファリン療法を受けている患者では、ガーリックのサプリメントとの併用によって出血時間を延長させる可能性がある」と警告しており、また「併用した場合、血液凝固時間が2倍になった」との報告もある(WHOモノグラフ)。これはガーリックの血小板凝集阻害作用によって抗凝血薬の効果が強く出るためとされ、血糖低下、抗凝血治療をしている場合には禁忌とされている。また、アスピリンなど抗炎症薬の抗血栓作用を強化する可能性も指摘されており、魚油中のEPAと相乗作用を起こすことも示唆されている。こうした情報を受けて、米国では、ワーファリン服用者に対し、ガーリック・サプリメントや根茎(1つ以上)を摂取しないように注意を促すドラッグストアもある。
 
一方、ガーリックは流産を起こすとされ、月経周期への影響や子宮活性作用も報告されている。そのため妊娠期や授乳期の摂取を禁忌とする示唆もあるが、今のところ根拠となる基礎・臨床的報告はない。

(Medical Nutrition 14号より)


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