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 【イチョウ葉エキス】

医療従事者の間で関心が高まっているハーブについて、その効用を紹介する「メディカルハーブ」。第1回は、WHOや米国FDAも認める医薬代替食品の代表格「イチョウ葉エキス」を取り上げます。400例以上の基礎・臨床データを持ち、ドイツやフランスなどヨーロッパ諸国では医薬品となっているイチョウ葉エキスの真価を問う。


 中枢神経に働くフラボノイド

イチョウ葉エキスは、世界で最も高い評価を得ているハーブの一つだ。日本の制度下では医薬品として承認を得るのは不可能に近く、食品として流通している。しかし、ドイツのW・シュワーベ製薬が製造するイチョウ葉エキス「EGb761」は医薬品「テボニン」(ドイツ)、「タナカン」(フランス)などとして製品化されており、ドイツやフランス、スイス、オーストリア、イタリアなど75ヵ国で処方薬やOTC薬として販売されている。例えば「タナカン」の効能書きは、脳の血液循環の不全およびそれに伴う機能障害(目眩、頭痛、知能低下、運動障害、感情障害)、脳の血管障害および頭部障害の後遺症、抹消血管(毛細血管)の循環障害、血液の循環不全による感覚神経の障害、特に眼科および耳鼻咽喉科領域におけるものとなっている。

主成分はフラボノイド類のフラボン画分と非フラボン画分で、フラボン画分にはケルセチンやグルコラムノシドのクマール酸エステルなどが含まれ、非フラボン画分にはイチョウの特有の化合物としてテルペノイドのビロバリド、ギンコライドが含まれている。治療での適用範囲は、1)脳機能障害の治療、2)頚部症候群を原因とする聴力障害の治癒促進、3)持続性の血行鬱滞を伴う末梢性動脈血行障害の治療――で、近年は脳梗塞などの脳血管障害はもとより、アルツハイマー病や脳血管性痴呆、老人性痴呆の抗痴呆薬として、盛んに臨床応用されている。

 WHOが医薬品分類にイチョウ葉エキスを収載

ヨーロッパでの実績を受けて、99年9月にはWHOが医薬品分類にイチョウ葉エキスを収載した。WHOの医薬品分類で抗痴呆薬は、「アセチルコリンエステラーゼ阻害剤」と「その他の抗痴呆薬」に分類されている。

日本では、98年5月に老人性痴呆症に長らく投与されてきた脳循環代謝改善薬が承認取り消しとなっており、現在に至っている。しかし、日本でもアセチルコリンの分解を阻害することによって脳内のアセチルコリン量を補うコリンエステラーゼ阻害剤が、アルツハイマー型痴呆薬として承認を得ている。一方、イチョウ葉エキスはアセチルコリンの分解を促すと同時にアセチルコリン合成を促進させる作用が特徴となっている。脳循環代謝を活性化させるため、アルツハイマー型、脳血管障害型の両痴呆症に幅広く適用できることから、WHOも「その他――」と分類した。

 米国医師に高い支持

シュワーベ製薬によって1960年に研究がスタートしたイチョウ葉エキスは、当初から血液循環の改善作用が注目されてきたが、これまでの研究で活性酸素消去作用や血小板活性化因子(PAF)受容体拮抗作用、血管拡張作用、虚血脳代謝改善作用などが次々と明らかにされ、脳血栓や脳梗塞、脳出血などの脳血管障害をはじめ幅広く痴呆症の治療に使われるようになった。その作用メカニズムについて、シュワーベ製薬のT・シュメラー博士は、98年に来日した際に、他面的な作用によって、EGb761の痴呆症に対する薬理作用を説明した。

米国では医薬品承認に向けた臨床試験をFDAによって認められており、医薬品化が見込まれている。アルツハイマー病患者の増加が深刻化する米国では、イチョウ葉エキスの臨床応用に対する医師からの期待が高い。97年10月の米国医師会誌JAMAに、アルツハイマー病や多発性梗塞痴呆症に対する309例の52週間にわたる二重盲検試験の報告が掲載された。評価条件を満たした202例のうち、集中力の改善が27%に、老年性評価での日常生活機能の改善が37%に見られた。中心的に研究を実施したニューヨーク医学研究所では、中枢神経系での主な薬理作用は抗酸化作用にあると指摘し、主要成分のテルペノイドや有機酸の相乗作用によって、アルツハイマー病に見られる細胞損傷の原因となるフリーラジカルを除去することを示唆した。

 老人性痴呆に改善傾向

日本での臨床研究はまだ少ないが、98年に長谷川式スケールによる評価で老人性痴呆症に対する臨床報告を行った東京足立区の東和病院・稲生綱政院長は、痴呆の度合いをより簡便に評価できる片山式簡易7項目痴呆スケール(合計点12以上が正常、3以下は超高度痴呆)を指標として追跡調査を実施している。老人性痴呆の入院患者11例(脳血管障害あり)にイチョウ葉エキス40mg粒(EGb761)を1日160mg投与、2例を対象とした試験を実施し、8週間の投与の結果、特に軽度の老人性痴呆に改善傾向が見られた。また同時に1週間毎に看護記録をとって臨床症状を検討した結果、片山式スケール7点以上の痴呆ではスケール値とともに改善する例が多く見られ、痴呆の進行を防止する可能性が示された。

99年10月の日本代替医療学会では、慶應義塾大学・植松大輔客員講師が臨床結果を報告している。脳血管障害後遺症とアルツハイマー型老年痴呆症の患者20例に対し、1日240mgを4週間投与し、頭痛や自発性低下などの臨床状況を検討した結果、15例に改善が認められた。

また、昨年11月の日本薬剤師会学術大会でも報告が行われている。江戸川区の薬剤師・小菅貞男氏は、慢性的な片頭痛や鼻出血に対する改善例を示し、そのメカニズムを動物実験で確認している。小菅氏は「一次予防の時代を迎えた昨今、薬局店頭で大いに活用し、セルフメディケーションの実践に役立てるべき」と語る。また、2度の臨床試験を行った稲生医師も「老人健診で痴呆評価スケールを導入し、軽度のうちに痴呆を発見できれば、イチョウ葉エキスによってかなりの改善が期待できる」と話す。

― 相互作用情報 ―

「アスピリンとの同時服用」
イチョウ葉エキスに限らずメディカルハーブを用いる場合、処方薬など他の薬剤との同時服用による相互作用を考慮しなければならない。400例に及ぶ基礎・臨床研究の結果、安全性は非常に高いとされるイチョウ葉エキスについても同様で、海外ではイチョウ葉エキスとアスピリンの相互作用を示唆する報告もある。
 
それによると、70歳の老人が80mgのイチョウ葉エキスを摂取しはじめて5日後に、視覚のにじみが起こったという。老人の主治医が検査した結果、眼球の底部に血液が溜まっていることが判明したが、専門家によるとこの症例では、アスピリンとイチョウ葉エキスの同時摂取によるもので、アスピリンとイチョウ葉エキスがともに血小板の集合、凝集を阻害する作用があることから、生じたものとしている。この老人は、イチョウ葉エキスの摂取を止め、視覚は正常に回復した。

(Medical Nutrition 13号より)


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