医薬品の中には血中葉酸濃度を低下させるものもある
 医薬情報研究所 エス・アイ・シー
 医薬情報部門責任者  堀 美智子
 公園前薬局 青木 吉次

妊娠中の葉酸の欠乏と胎児の神経管閉鎖障害の関係も報告され、妊娠可能な年齢の女性に葉酸の摂取は不可欠になっている。ところが、抗てんかん薬の成分が葉酸濃度を低下させる作用のあることがわかってきた。こうした医薬品を使用する場合は、血中葉酸濃度のチェックを充分行いたいもの。


 葉もの野菜やレバーなどに豊富に含まれる葉酸 

「葉酸」は、ビタミンB群の一つで、ほうれん草の葉から分離されたビタミンです。その名前は、ラテン語で「葉」を意味するfoliumに由来します。葉酸の所要量は200μg、許容上限摂取量は1000μgとされています。許容上限が定められたのは、葉酸の蓄積性や毒性は知られていないのですが、葉酸とビタミンB12が核酸の代謝に関係し合っている事から、大量の葉酸の摂取が、ビタミンB12が欠乏していてもその欠乏をマスクしてしまい、不可逆的な神経障害を進行させてしまう可能性があるからです。

食品では、緑の濃い葉もの野菜(サラダ菜、サニーレタスなど)や、ビール酵母、レバーなどに葉酸が豊富に含まれています。しかし、葉酸は化学的に熱や酸化に弱いため、食品の温め直しなどでは、簡単にかなりの量が失われるとされています。加工食品や調理済み食品の利用が多い場合には、葉酸の摂取不足に注意が必要となります。

生体内で葉酸は、一炭素転移反応に関与し、核酸の合成、ホモシステインのメチオニンへの変換、フェニルアラニン、ヒスチジン、セリンの代謝などに重要な役割を持っています。この葉酸についての最近の研究知見では、心疾患、がん、出生時の先天異常の予防について多くの報告がされています。心疾患については、動脈硬化のリスクファクターの一つとされる血中ホモシステイン値を葉酸が低下させる報告があります。すなわち葉酸は、ホモシステインからメチオニンへの代謝を促進して血中ホモシステイン値を低下させ、虚血性心疾患、脳梗塞のような動脈硬化性血栓性疾患発症のリスクを低下させると言われています。


 葉酸摂取が欠かせない妊娠可能年齢の女性が注意したい薬品類 

また、妊娠中の葉酸の欠乏と胎児の神経管閉鎖障害との関係も報告されています。神経管閉鎖障害は、頚部及び尾部神経管の閉鎖不全による、中枢神経系の異常の総称で、無脳症、二分脊椎など重篤な外表奇形のひとつです。この予防対策として、2000年末、厚生省(当時)は「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」という通知をだしました。これは、妊娠可能な年齢の女性に対して、「食品に加えて、いわゆる栄養補助食品から1日400μgの葉酸を摂取するように」という情報提供を行うことを求めたものです。

ところで、この葉酸の摂取については、抗てんかん薬を服用している女性については、妊娠可能てんかん女性の治療に関するガイドラインでも、以前から計画出産に際して、妊娠前に血中葉酸濃度を測定して、低値であれば、葉酸を補充するようにとされています。前述したように、葉酸の不足が、神経管閉鎖障害のリスクファクターであることは、疫学調査から明らかにされており、ガイドラインに葉酸をチェックする項目が設けられたのは、抗てんかん薬のフェニトイン、フェノバルビタールが、葉酸の濃度を低下させる作用があることによると考えられます。

このように医薬品の中には、血中葉酸濃度を低下させる報告のあるものがあります。報告のある主な医薬品を表1に示します。これら薬剤を使用中の患者に対しては、血中葉酸濃度のチェックや、葉酸の積極的な摂取、サプリメントでの補充が重要であると言えます。医薬品を長期に服用している方に対しては、医薬品と栄養素の相互作用について注意することが大切です。


(Medical Nutrition38号より)


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