ジゴキシンと食物繊維成分の同時摂取に注意
 エス・アイ・シー 堀 美智子

大腸がんのリスクを低下させたり、糖の吸収をおだやかにしたり、さらにコレステロールを吸着したりといった作用を利用してさまざまな特定保健用食品に、食物繊維成分が配合されている。が、シゴキシンと同時に摂取すると、この薬品の吸収を遅延させる可能性があるので、注意したい。


 食物繊維成分によって吸収を遅延させられる薬品がある 

現代人に不足しがちな栄養素として、食物繊維が知られています。目標摂取量は、1日20〜30gとされていますが、現在ではすべての世代の平均摂取量が約16gと不足しています。伝統的な日本食は食物繊維を豊富に含む理想的な食品だったのかもしれません。食生活の洋風化とともに、摂取量が減っている食物繊維は、催便成分として大腸がんのリスクを低下させることも期待されることから、現在積極的な摂取が勧められているところです。また、消化管内で、糖の吸収を緩やかにしたり、コレステロールを吸着したりといった作用を利用して、「血糖値が気になる方へ」、「コレステロールが気になる方へ」、「お腹の調子を整えたい方へ」など様々な特定保健用食品に、食物繊維成分が配合されています。表に、各種食物繊維成分を用いた特定保健用食品を紹介します。

ところで、食物繊維との同時摂取に注意が必要な医薬品にジゴキシンがあります。このジゴキシンは、食物繊維の多い食事(ゴボウ、レンコン、山菜)や、ふすま食物とともに服用すると、吸収が遅延される可能性があります。

ジゴキシンは、心筋の収縮力増強作用や、徐脈作用を持つ強心配糖体と呼ばれる医薬品で、内服薬や注射薬の形で投与され、うっ血性心不全や、心房細動などによる頻脈の治療などに用いられます。このジゴキシン有効血中濃度は、0.8〜2.0ng/mlと狭く、中毒域では嘔気・嘔吐・不整脈の誘発など重篤な中毒症状が出現する可能性があることから、患者ごとに投与量を細かく設定する必要があります。特に薬物血中濃度を測定して、至適投与量を決定する必要もあります。


 ジゴキシンと食物繊維成分との同時摂取は避けるべき

ジゴキシンと一般の食品との相互作用では、吸収されるジゴキシンの総量は通常と変わらず、ジゴキシンの吸収が遅れるとされています。この吸収の遅れによる有害事象の報告はないようですが、特定保健用食品やサプリメントなどで、食物繊維成分との同時摂取により、ジゴキシンの有効血中濃度が低下し、循環器疾患が悪化する可能性も否定できません。併用は避けるべきです。

また、食物繊維の過剰摂取は、脂溶性ビタミン(ADEK)や鉄分の吸収を阻害する可能性があります。一部の繊維成分を利用した特定保健用食品では、「植物スタノールエステルは、α―トコフェロールやβ―カロチンの吸収を抑制することがありますので、果物、野菜類の摂取を心がけてください」、「植物ステロールは、β―カロチンの吸収を抑制することがありますので、果物、野菜類とともに摂取してください」、「食物繊維の摂り過ぎは鉄分などミネラルの吸収に影響を与えることがあります。気になる方にはミネラルの補給をおすすめします」、「月経時及び貧血気味の方は鉄分の補給を心がけてください」などと注意表示が記載されています。普通、自然にある食品を摂取する時には、食物繊維を含むものは、ビタミンやミネラルを含んでいることから、食品が問題となることはないのですが、特定保健用食品として単一成分の摂取に対しては、他の必要栄養素とのバランスを考慮することが大切です。

また、繊維成分を用いた多くの特定保健用食品が、便秘の方の利用を想定していますが、痙攣性便秘は、副交感神経の過緊張によるとされ、腸の痙攣性収縮のために、結腸に機能的狭窄が生じて便秘を来すことから、食事療法では、他の便秘の場合と異なり、大腸への刺激を避けるために、繊維の多い催便性のある食物は避けなければなりません。このように、繊維の摂取が、必ずしも便秘の改善につながらないこともあるため、その利用には注意が必要です。便秘を訴えて特定保健用食品を利用されようとする方へは、便秘の状況を詳しく聞き取り、「兎糞状の硬便」などといった痙攣性の便秘の可能性がないことを確認することが大切です。


(Medical Nutrition37号より)


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