味覚障害の治療には亜鉛補給を エス・アイ・シー 堀 美智子/公園前薬局 青木 吉次
薬剤性味覚障害の原因として注目されている亜鉛。血中の亜鉛と薬剤がキレート化合物を形成し、亜鉛の尿中排泄が促進されて亜鉛欠乏となり、味蕾細胞の新生が阻害されるという。
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精神的な不安感も引き起こす味覚障害 |
食事が味気ない、おいしくない、好みが変わった、変な味がする――食べ物が口内にない時でも苦みや金属味がするなどの訴えがあるとされる味覚障害は、単に食べ物の味の変化というだけではありません。日常生活において、風味としての食欲低下、食事摂取量の減少、低栄養等の問題をもたらし、精神的な不安感や焦燥感などを引き起こすことが推測されます。
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現在130成分異常の医薬品で味覚障害の副作用ありの報告 |
味覚異常や味覚減退は、放射線治療による舌の炎症、中耳手術などによる味覚神経の障害、臭覚障害、頭部外傷、治療に用いた薬剤の副作用など様々な原因によって起こることが知られています。薬剤性味覚異常は味覚障害の原因の中でも比較的頻度が高く、特に高齢者ではこの傾向が顕著であると言われています。薬剤性味覚異常として、前述したような様々な症状を患者は自覚するようですが、特に金属味は最も一般に起こりやすく、明確に自覚できる症状とされています。しかし、患者に対応する場において、このような味覚障害の具体的症状を患者側から積極的に訴えられることは少なく、また、患者の訴えから味覚障害の可能性を連想するためには、常に意識して患者を観察していなければなりません。たとえ、副作用が発生していたとしても気づかれることなく放置され、患者のQOLが低下したままということになりかねないため、注意が必要です。現在130成分以上の医薬品で味覚障害の副作用報告があり、降圧薬、抗パーキンソン薬、利尿薬、抗がん薬、抗リウマチ薬など、薬効群も多岐にわたっています。カプトプリルなどのACE阻害薬でも副作用として報告されています。降圧薬、血管拡張薬として用いられるACE阻害薬は、使用頻度が高く、かつ長期連用されるため、実際に臨床症状を呈する可能性が高く、注意が必要となります。
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薬剤性味覚障害の原因として注目されている血中の亜鉛 |
薬剤性味覚異常の原因として注目されているのが、血中の亜鉛に関するものです。血中の亜鉛と薬剤がキレート化合物を形成し、亜鉛の尿中への排泄が促進されて亜鉛欠乏となり、味蕾細胞の新生が阻害されるために起こるのではとされています。特に、構造中にSH基を有する薬物は、亜鉛キレートを形成する(SH基のHがはずれてそこに亜鉛を取り込む)可能性が高いようです。亜鉛キレート化合物は通常、五員環、六員環を形成すると安定します。SH基以外に、――COOH 基や――NH2基をもっている化合物でも亜鉛キレートを形成する可能性が高く、味覚障害の被疑薬としての注意が必要です。
味覚障害の原因として薬剤が考えられる場合、原因となる薬剤の減量または中止、変更を考慮しなくてはなりませんが、原疾患によっては、味覚障害の副作用よりも治療を優先させて、薬剤の服用を継続したまま、不足した亜鉛を補う治療が選択されることがあります。病院で行われる亜鉛の補充としては、試薬特級硫酸亜鉛100mgをカプセルに充填して経口投与することがあります。この際の注意として、硫酸亜内服により、急激に血清亜鉛値の上昇する症例があるため、治療中は血清亜鉛値のモニターが必要であるといえます。
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インスタント食品などの食品添加物にも注意を |
また、消化器症状等の副作用も問題とされています。亜鉛の欠乏が考えられる場合には、亜鉛を含む胃腸薬やサプリメントを亜鉛の補充目的に使用する例も増えてきました。治療開始後の有効率は約65%で、約半数が1カ月以内に症状が改善したとの報告があります。副作用発生の予防のためには、亜鉛を含む食品の積極的な摂取も勧められます。亜鉛を多く含む食品としては、牡蠣、タタミイワシ、煮干し、レバー、小麦胚芽、そら豆、豆腐、パルメザンチーズなどがあります。表に亜鉛補充に利用できる主な製品をあげます。
しかし、亜鉛とキレートを作って問題となるのは、薬として使用されるものだけでなく、加工食品やインスタント食品などに添加される食品添加物にも亜鉛と結合する成分が知られています。フィチン酸、ポリリン酸などは注意が必要です。

(Medical Nutrition 34号より)
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