薬の服用で気をつけたいビタミン・ミネラルの欠乏
 医薬情報研究所 エス・アイ・シー 医薬情報部門責任者 堀 美智子
 公園前薬局 青木 吉次

薬と食事中の成分との相互作用、特にビタミン・ミネラルの欠乏を引き起こす可能性のある薬剤について解説。


 食事中の成分と結合して吸収されなくなる量を計算して決められる薬の服用量

ビタミン・ミネラルと医薬品の相互作用といえば、例えばニューキノロン系やテトラサイクリン系の抗生物質と、カルシウムなどの金属カチオンの相互作用のように、キレートを形成するため一緒に服用しないように、すなわち、併用を避けるというとらえ方が一般的です。そのため、「テトラサイクリン系の抗生物質は牛乳やヨーグルトあるいはカルシウム等を多く含む食品とは一緒に摂取しないでください」という指示を薬剤師は行います。しかし、これを食品という角度から見ると、また別のとらえ方が必要となります。薬の服用については、多くの場合、食後の服用が指示されます。これは、胃への直接作用などによる胃腸障害を防いだり、薬の服用と食事を関連づけることで飲み忘れを防ぐことを期待して、このように指示されるのです。

さて、先に記したテトラサイクリン系の抗生物質は、カルシウムと一緒に存在すると、カルシウムと結合してそのまま吸収されず、便中に排泄されてしまいます。キレートを形成しなかったものが、体内に吸収され、薬として働きます。薬物の服用量は、生物学的利用率すなわち食事中の成分と結合して吸収されなくなる量を計算して決められていますから、食後に服用しても、特に食事中にカルシウムが多くなければ薬の働きには影響がありません。しかし、食事中のカルシウムの摂取量は影響を受けることは十分考えられるわけです。テトラサイクリン系抗生物質は、感染症に使用する薬ですから、長期間使用されることは少なく、臨床上問題となることはあまりありません。しかし、ニキビなどの治療目的で長期間使用される場合には、カルシウム等のミネラルの欠乏に配慮することが必要だと考えます。そのため、この薬の長期服用時には、カルシウム等の積極的な摂取を、薬の服用時間と間隔をあけて行うことが勧められるわけです。

このように、薬と食事中の成分との相互作用は、食事中の成分の吸収減弱などに対する影響から、欠乏を引き起こす可能性について検討することが大切です。

 薬剤の生体に及ぼす影響から引き起こされるビタミン・ミネラル欠乏の可能性

相互作用については、以上のような化学的な結合といった問題だけでなく、その薬剤の生体に対する影響から、引き起こされるものもあります。例えば、H2ブロッカーやプロトンポンプインヒビターのように、胃酸の分泌を抑える薬剤は、胃内pHを上昇させ、その結果様々な影響を生体に与える可能性があります。すなわち、胃酸による殺菌作用の減弱、胃酸によって活性化される蛋白分解酵素ペプシノーゲンの活性化が抑制されるなど、本来の消化活動が変化をきたすことが考えられるわけです。そのため、ビタミンB12の吸収が減弱される可能性もあるわけです。

まだまだ、これらの食品成分と医薬品との相互作用についての報告は少なく、十分研究されているとはいいがたいのですが、ビタミン、ミネラルの欠乏を引き起こす可能性のある薬剤の例を表にあげておきますので、注意していただけたらと思います。


(Medical Nutrition 33号より)


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