高血圧(ACE阻害薬を中心に)
 医薬情報研究所 エス・アイ・シー 医薬情報部門責任者 堀 美智子

生活者はもちろん医療関係者でも判断しづらい「健康食品と薬品の相互作用」。今回は、前回に続き高血圧をテーマに、ACE阻害薬を中心に解説。


 特定保健用食品も「薬」的な観点からの注意が必要

循環器疾患の疫学的追跡調査を総合した検討(平成10年度厚生省老人保健事業推進費等補助金「保健活動における介入の有効性に関する研究事業」報告書)によると、脳卒中発症、虚血性心疾患ともに第一の危険因子が高血圧とされている。また、健康日本21の報告書によれば、日本における最高血圧の平均が1mmHg下がれば、脳卒中死亡率は3.2%減少すると予測されており、循環器疾患予防対策は、まず、高血圧への対策ということが周知されている。

この様な背景から考えれば、特定保健用食品の利用は、意味ある事と考えられるが、ある意味からすれば、「食」と「薬」の区分が難しく、その摂取にあたっては、食品であったとしても当然「薬」的な観点からの注意が必要となる。以下に使用上の注意について記す。

各社から多種販売されているこれらの特定保健用食品の、主な成分としては4種にまとめられ、その作用メカニズムは不明な点も多いが2種に大別される。杜仲葉配糖体(ゲニポシド酸)は、副交感神経を刺激して血管を拡張させる。一方、ラクトトリペプチド、オリゴペプチド、サーデンペプチドなどのペプチド成分では、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害作用によって血圧を下げると説明されている。

 薬物との併用には、その作用メカニズムを考える必要性がある

ACE阻害作用を有する薬は、医療用として、以前より血圧降下剤として用いられており、『高血圧ガイドライン2000年版−JSH2000』でも第一選択薬にあげられている。ACEとは、アンジオテンシン・からアンジオテンシン・という強力な昇圧物質をつくる酵素である。また同時に、血管拡張物質であるキニンの分解酵素(ACE=kininase ・)でもある。すなわち、ACE阻害剤は、ACEの活性を低下させ、アンジオテンシン・の合成を抑制し、ブラジキニンの分解を抑えることで血圧を低下させると考えられている。

ところで、ACE阻害剤の副作用として、咳がよく知られている。主に乾性の咳で、発症者の全体の3分の2が女性とされ、男性に少ない傾向がある。また、非喫煙者が喫煙者の2.25倍と多い、などの傾向も報告されている。ACE阻害剤によって誘発される空咳の発現機序についての有力な仮説としては、気道局所でのブラジキニンやサブスタンスPの増加が考えられている。ブラジキニンが気道のC繊維末端を刺激し、その結果サブスタンスPなどのタキキニンが遊離し、これらの刺激により空咳が起こると考えられている。咳は、投薬2〜3日で出る例は少なく、数週ないし数カ月後から出る例が多いとされ、ACE阻害剤を中止すれば、通常1週間以内に咳は消失する。

サーデンペプチドなどのペプチド成分を含む食品でも、ACE阻害作用的な効果で説明されているものについては、医療用と同様に空咳に注意が必要である。実際、特定保健用食品にも、「長期摂取によりまれに咳が出ることがある」といった注意表示がされている。

以上のことから考えると、高血圧治療等でACE阻害剤を服用している患者が、ペプチド成分を含む食品を摂取することは、好ましいとは言えない。高血圧の治療中の薬物との併用も、その作用メカニズムを考える必要性を示したものといえる。すなわち高血圧患者の薬物療法あるいは生活習慣是正プログラムでは、これらの特定保健用食品のポジショニングを含めた適正使用情報の提供が欠かせない。

(Medical Nutrition 30号より)


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