|
全身病としてのがん術後療法。
銀座東京クリニック
福田一典 院長
銀座東京クリニック(東京都墨田区)の福田一典院長は、岐阜大学東洋医学講座や国立がんセンターでの経験を生かし、漢方薬を基本とした統合医療を行っている。症例によってはサリドマイド、セレコキシブ(COX−2阻害剤)などの未承認医薬品や各種サプリメントを組み込む。漢方薬とサプリメントが術後の全身状態改善に役立った症例を聞いた。
- 症例 胃がん(68歳男性)
- 経過:進行胃がんのため、他院にて胃全摘とリンパ節郭清を受けた。退院時すでに体重が約4kg減少していたが、その後さらに3kg減り、易疲労性もみられるようになった。もともとやせ型、胃腸虚弱気味であったが、術後は食事の味がしなくなり、ますます食欲が低下。便は軟便〜下痢傾向であった。
- 主治医に相談するも、消化剤と整腸剤、ビタミン剤を処方されるのみだったという。そのため、患者は自発的にアガリクスやプロポリスなどのサプリメントを数種類使っていた。しかし食欲不振や疲労・倦怠感は改善せず、体重の減少に歯止めはかからなかった。
そこで、当院では消化吸収機能を高め、栄養状態を改善する補中益気湯を開始した。多数併用していたサプリメントは一旦中止し、アガリクス(活性化多糖製品)のみを服用することとした。
2週間後に再来すると、軟便〜下痢が消失し、食事がおいしく摂れるとのこと。体の活力が出て倦怠感がなくなった。同様の治療を続けたところ、6ヵ月後には体重が術前と同じレベルにまで回復した。
- 【考察:】
- 西洋医学のがん治療が、病巣を取り除く、あるいは叩くことを主眼として発展してきたのは言うまでもない。しかしその一方で、「全身病」としての観点が欠落していたのではないだろうか。局所に発生したがんは「氷山の一角」に過ぎない。基盤にある自己治癒力・免疫力の低下、慢性炎症、食生活の偏りなどの要因を取り除くことを並行すべきだろう。
- ただし見落としてはならないのが、免疫増強作用をもった医薬品やサプリメントをいくら多用しても、栄養や血液循環の状態が悪ければ、十分に効果を得られないということ。本症例でも、免疫を上げるとされる数種類のサプリメントを服用していたが効果は得られなかった。気を補う「補剤」である補中益気湯をベースに用いることで、全身の諸機能が良好に保たれたと考えている。
- 消化吸収、血液循環、心理的ストレスなどの状態を症例ごとに把握し、20〜30種類の生薬を組み合わせる。漢方薬では、免疫活性のみならず、抗酸化作用、血行促進作用などさまざまな働きの生薬を組み合わせることができるのがよい。
- なお、補剤と呼ばれる漢方処方には、T細胞の分化をTh1優位にする作用や骨髄の造血機能を回復させる作用が報告されている。
- 酸化ストレスが亢進した状態では、がん細胞の悪性化が促進されるため、抗酸化ビタミンの摂取も必要である。当院では、1粒中にβ−カロチン9mg、ビタミンC500mg、ビタミンE200IU、セレン100μgを含有するサプリメントを、1日2粒摂取するよう勧めている。特にセレンは重要で、このサプリメントにより1日200μgを補う。(談)
(Medical Nutrition 47号より)
|