「キレる」子供にキトサンが有効
  日比谷クリニック 酒井和夫院長

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)の有用性に早くから着目するなど、ストレスケア日比谷クリニック(東京都千代田区、03‐5251‐1553)の酒井和夫院長は向精神薬の動向に詳しいことで知られる。同時に、酒井院長は機能性食品や補完代替医療にも造詣が深い。特に低分子キトサン(GPC法で分子量3万〜4万)の精神科領域での有用性については、すでに500例以上で確認しているという。その中から境界型人格障害と行為障害の症例を聞いた。


【症例1】
25歳男性 境界型人格障害
【経過】
長年にわたり自宅に引きこもり、両親に暴力をふるっていた。当クリニックで数種の向精神薬を試みるも効果がなく、精神病院に入院させるしかなかった。しかし、そこでの治療にも反応せず、患者は2ヵ月後に病院を抜け出す。そこで、低分子キトサン2000mg/日を摂取させたところ、著明な改善が見られ、暴力が消失。継続摂取でそのまま症状は安定している。
【症例2】
17歳男性 行為障害
【経過】
知能発育遅滞を合併。性器露出症と暴力性があり、これらは抗精神病薬や抗てんかん薬の大量投与にも抵抗する。それどころか、治療によって意識障害、めまいなどの副作用が発現し、日常生活に支障をきたしていた。ともあれ副作用のない治療をと、低分子キトサン1300mg/日の摂取を続けると、次第に露出癖や暴力行為がなくなった。さらに、1人でバスに乗るなど生活技術が増大し、社会に適応できるようになった。
【考察】
近年、「キレる」少年少女や引きこもりが社会問題となっているのは周知のところだ。彼らの中には薬物治療や心理療法に抵抗し、難治な例もある。そのような患者に、カニ殻由来の食物繊維・キトサンを試みている。投与量は1300〜2800mg/日が中心。少量から開始するのがコツである。服用開始後2〜5日で効果が発現し、約8割の症例で何らかの効果がある。副作用は経験していない。

最近、SSRIなど新しい向精神薬が臨床で使用されているものの、小児や高齢者には副作用の面でなお注意を要する。また、アルコール・ギャンブル・買い物依存症あるいは粗暴性、攻撃性を示す患者など、従来の治療で難渋する例も依然として存在する。キトサンはこれらの症状に対して特異的とも言える効果を有し、しかも副作用が極めてまれであるため、治療の選択肢として重宝している。

なぜキトサンが精神疾患に有効かは未解明だが、低分子キトサンの吸収性が優れていること、血管機能に対して働くこと、そして特殊なペプチドが結合すると脳に移行することなどが鍵を握るだろう。もともとヒトはカニや昆虫の殻を食べる習慣はないが、植物を介した食物連鎖のなかで殻の成分を無意識のうちに摂取しているとされる。食品には3次機能と呼ばれる生理調節作用があり、それが精神機能を含めたさまざまな生体活動に関与している。食生活や環境の変化に伴い、かつては食生活で補われていた食品因子が欠乏しやすくなり、それをサプリメントで補給すると考えれば理解しやすい。

クロルプロマジンやレセルピンの例を出すまでもなく、向精神薬では先に薬効がわかり、あとで作用機序が解明されるのは珍しいことではない。今後キトサンにおいても、攻撃性のラットなどを用いた研究が待たれる。

本症例は第15回キチン・キトサンシンポジウム(鳥取県米子市)で報告した。

(Medical Nutrition 30号より)


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