酵素は生命機能を創る物質
 栄養医学研究所所長・佐藤章夫

この10年の間に米国の栄養療法の中で飛躍的に発展を遂げてきた治療法があります。それは酵素療法で、化学物質や食品添加物、重金属など、現代社会の環境がもたらした新たな治療法とも言えるでしょう。


 消化工程の活性化を促す酵素

人間の体は、蛋白質、炭水化物、糖質及び脂質を消化することが可能な約22種の消化酵素を作ります。食物の消化は、咀嚼にはじまり、胃を経て最終的には小腸までの一貫した工程です。この段階では異なる酵素が働くことになりますが、蛋白質を消化するように設計されているプロテアーゼなどの酵素は、澱粉には影響を与えず、口腔内で活性する酵素は胃では活性しません。口から小腸までの各消化工程では異なる酸度が保たれており、各酵素の働きは酸性バランスによって調整されています。酵素が口で食物を消化しはじめ、胃へ送られ、サプリメントとして摂取する植物酵素が加わることによって、さらに消化工程が活性されることになります。

酵素療法のプロトコールは、各酵素の機能に基づいています。酵素療法が得意とする分野は、急性・慢性的な消化および免疫機能の障害です。栄養療法の中で酵素療法は、消化機能障害を改善することにより、そこから発生する疾患を緩和改善するための重要な治療ステップで、通常、植物酵素と膵酵素は、必須栄養素の消化吸収を向上させる補足的な方法として使われます。通常、酵素療法では経口の酵素サプリメントを使用します。酵素療法を行う際には、患者の胃酸分泌能力および腸管膜の炎症の有無を検査し、酵素による治療と同時に腸管膜の炎症を改善する目的で、FLAXオイル、ビタミンB12、葉酸の処方を行います。

酵素は体内における数千種類の生化学的反応への刺激触媒作用を持っており、米国で酵素療法を唱えてきたDr・Howellは、「酵素は全ての生命機能を創り出す物質である」と言っているように、酵素なしではビタミン・ミネラル、ホルモンは機能することができません。

 消化酵素と代謝酵素に大別される酵素

酵素療法で使用する酵素は、「消化酵素」と「代謝酵素」の2種類に大別され、消化酵素の代表格は、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼで、代謝酵素の代表格は、SODとカタラーゼに分類されます。酵素療法では、これらの酵素に加えて、植物と動物から得られた酵素を症状に合わせて処方します。通常、サプリメントとしてカプセル、錠剤、パウダーそして液体状のものが患者の状態、特に胃酸の分泌能力に応じて処方されます。

植物から得られる酵素の代表的なものは、パパイヤやパインアップルから抽出されるパパインで、消化を助ける作用のほか、抗炎症作用、ハーブ(クルクミンなど)の吸収促進作用があります。このほか、アボガド、バナナの抽出成分にも消化酵素作用があり、酵素療法では常備酵素サプリメントとして頻繁に使用されます。

ただし、酵素は熱に非常に弱い物質であるため、酵素療法で支持される食事は生の状態で摂取することが求められます。動物の肉に含まれる酵素も生の状態でなければ活性しえないことから、米国の栄養療法医師や文化人類学者の中には、日本人が胃酸の分泌能力が低い背景には、古来より頻繁に酵素活性が残っている生の魚を食している民族であるからではないかと言う説もあります。

(Medical Nutrition 33号より)


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