マイタケ抽出物で多嚢胞性卵巣症候群を改善。
 ロマリンダクリニック

PMS (月経前症候群) や子宮内膜症、 細菌性膣症などの女性疾患に対し、 カウンセリングと非薬物療法で治療効果をあげているのは、 福島県郡山市で開業するロマリンダクリニックの富永国比古医師 。 治療の選択肢はベジタリアン食、 ゲルソン療法、 サプリメントなど様々だ。 最近は、 不妊症治療にマイタケ抽出物を原料としたサプリメントを投与して、 治療効果に確かな手ごたえを感じている。


 インスリン低下作用に着目。

不妊症の原因の一つに多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS) がある。 治療法は、 薬物療法と手術療法があり、 薬物ではクロミフェン、 HMGを使用するのが主流だが、 最近は経口糖尿病薬を処方するケースもある。

PCOSは、 卵巣の表面が肥厚し、 卵子が排卵しにくくなる病気。 初期段階の治療ではクロミフェンやHMGなどの排卵誘発剤が広く使われているが、 クロミフェンはゴナドトロピンの分泌を促進する作用がある反面、 頸管粘液の分泌や子宮内膜の増殖が妨げられ、 精子が子宮内に侵入できないなどの問題がある。 またHMGを使って排卵を誘発すると、 多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群 (OHSS) を起こしやすいといった欠点がある。

このため欧米では抗エストロゲン療法に変わって、 インスリン抵抗性改善薬のメトホルミン (商品名グリコラン等) を使用するケースが増えている。 卵巣内アンドロゲンの過剰分泌がPCOSの原因とみられるが、 インスリンはそのアンドロゲン産生を促進する働きがある。 従って、 グリコランを服用してインスリンを減少させると、 結果的に卵巣内のアンドロゲンが減少するからだ。 国内の臨床例でも糖尿病薬を数回投与したところ、 排卵誘発剤の量を減らしてもPCOS患者の症状が改善に向かったとの報告がある。

そこで冨永医師は、 米国のマイタケプロダクツ社が、 ジョージタウン大学、 ニューヨーク医科大学と共同開発した 「グリスリン含有マイタケ抽出エキス」 がインスリン抵抗性を改善させることに着目、 PCOSに対する排卵誘発効果を臨床により検討。 排卵誘発剤として用いられる漢方薬との比較試験ではグリスリンの優位性が確認された。

被験者は、 同クリニックに無月経を訴えて来院した患者の中から、 PCOSの診断基準 (表参照) に基づき、 (1)3か月以上にわたる無月経、 (2)LHの基礎分泌高値 (LH>10) 及びLH/FSH比>1、 (3)超音波断層検査で多数の嚢胞状変化が認められる―の3項目を全て満たし6ヵ月間投与できた患者12名とした。 臨床試験では、 12名を 「グリスリン含有マイタケ抽出エキス」 投与群 (A群) と、 生薬の 「芍薬甘草湯」 投与群 (B群) の二群に無作為に割り付け、 6か月間観察した。 患者には毎日、 起床前に基礎体温を測定・記録してもらい、 排卵の有無を確認してもらった。

その結果、 3周期投与における排卵回数は、 A群においては延べ18周期中10回 (55.5%)、 B群においては18周期中3回 (16.6%) であった。 また、 6周期投与における排卵回数は、 A群においては述べ36周期中17回 (47.2%)、 B群においては36周期中8回 (22.2%) であった。

この結果から、 富永医師は、 「従来、 PCOSに対する排卵誘発剤として用いられてきた芍薬甘草湯に比べて、 グリスリン含有マイタケ抽出エキスの優位性が確認された」 と話す。


 対症療法よりライフスタイルを見直すことが重要。 

グリスリンは、 米国の医療現場ではII型糖尿病の治療食として臨床応用されている。 米国での報告では、 グリスリンは血糖値とインスリンを低下させるため、 末梢組織のインスリン感受性を高め、 インスリン抵抗性を改善する作用があると推測されている。 日本では 「シンドロンSX」 (発売元:サンメディカ) の製品名で、 03年7月から発売されている。

富永医師は、 ホルモンに影響される女性は、 対症療法よりも食事改善など、 まずはライフスタイルを見直すことが重要と指摘する。

「納豆などの大豆製品をたくさん食べる女性は、 更年期症状が少ないというデータがあります。 植物性の女性ホルモンであるイソフラボンが関与していることが考えられます。 私の臨床経験でも更年期症状の改善に明らかに有効です」。

富永医師は、 ホルモンを 「補充する」 というよりも、 「バランスを整える」 ことにサプリメントの価値を見出しているが、 その一方では、 誤った使い方をすると思わぬ副作用を起こすと警告する。


PCOSの診断基準

I.臨床症状
  (1)月経異常 (無月経, 稀発月経, 無排卵周期症等)
  2男性化 (多毛, にきび, 低声音, 陰核肥大)
  3肥満
  4不妊
II. 内分泌検査所見
  (1)LHの基礎分泌値, FSHは正常範囲
  2LHRH負荷試験に対し, LHは過剰反応, FSHはほぼ正常反応
  3エストロン/エストラジオール比の高値
  4血中testosteroneまたは血中アンドロステンジオンの高値
III. 卵巣所見
  (1)超音波断層検査で多数の卵胞の嚢胞状変化が認められる
  2内診または超音波断層検査で卵巣の腫大が認められる
  3開腹または腹腔鏡で卵巣の白膜肥厚や表面隆起が認められる
  4組織検査で内莢膜細胞層の肥厚・増殖, および間質細胞の増生が認められる

(注) 以上の各項目のうち○印をつけた項目を必須項目として, それらすべてを満たす場合を多嚢胞性卵巣症候群とする。 その他の項目は参考項目として, 必須項目の他に参考項目をすべて満たす場合は典型例とする。

(日産婦・生殖内分泌委員会, 1993)

プロフィール
 富永 国比古 (とみなが・くにひこ)
1949年、 福島県生まれ。 岩手医科大学医学部卒。 米国ロマリンダ大学院博士課程修了。 公衆衛生学博士。 東京衛生病院産婦人科医長を経て、 ロマリンダクリニックを開業。

(Medical Nutrition 78号より)


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