全人的医療の基本、まずは患者の心をつかむこと、 そしてその気にさせること。 柳クリニック
院長の柳一夫氏は総合診療科医師として午前中は新東京病院に勤務し、 診療にあたっているが、 午後からは自らが経営する柳クリニックにて内科・漢方をベースにした診療を行なっている。 同クリニックでは 「病院では治せないものを治す」 というポリシーで運営しており、 カウンセリングを中心とした全人的医療がその特徴である。
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全人的医療=統合医療の実践にあたって。 |
「私はもともと外科医なものですから、 理論はさておき、 とにかく治ればいいんだと考えてしまう傾向があります。 だから患者さんを治すためにどんな治療がよいか模索しているうちに、 西洋でだめなら漢方を、 漢方でだめなら気功を、 気功でだめなら鍼灸を、 鍼灸でだめならアロマを……と気がついてみればさまざまな療法に足をつっこんでいました」 と柳院長は話す。
同クリニックの診療方針は、 患者にはできるだけ多くの選択肢を示し、 費用などの条件面も考慮してできる範囲内で最良のものを選んでもらうということ。 したがって、 自分のところよりもふさわしいと思われる診療所があればどんどん紹介していく。 「自分で患者さんを抱え込んだり、 自分の専門で何とかしたりしようなどとは考えません。 個性のある病院なり治療院が、 それぞれうまく連携すればいい」 (柳院長) と考える。
全人的=統合医療を現場で実践する同氏であるが、 日本では西洋医学は正しい治療、 東洋医学はあやしい治療、 サプリは予防、 アロマは癒しという認識が根強いことを実感している。
「医者はどうしても保証がほしいんですよ。 漢方の世界や代替医療の世界ではバックグラウンドとなる医学的証明がやはり弱い。 だから、 『これがいいですよ』 と言い切るのは、 医者としての責任感ですごく苦しい。 ただ、 患者さんによくなってもらうためにはそうも言っていられないときがあるんです」。
漢方に関して言えば、 相性が合えば、 有効率は100%と柳院長は考えているが、 その相性の良し悪し見抜くために重要なのは直感であるとする。
「相性という言葉は科学的ではないですよね。 脈診・指診・背診などで本人と漢方薬の相性を見るための判断材料が漢方には多少あるけれど、 他の代替療法、 ハーブ、 アロマなどは、 直感に頼って相性を見抜かなくてはならない比率はますます高くなるはずです」。
漢方の名医は歩いている人を見ると、 どの薬をその人に出せばよいかわかると言う。 「患者がドアを開けて入ってきてから席に座るまでに、 その人の仕草や体つき、 顔色などの情報をもとにその人が何でここへやってきたのかを見抜けるようにつねに訓練しています。 医師は感性を磨いて洞察力や分析力の向上を常に目指していなければならないと思うんです」。
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患者の心に入り込み、幸せな生き方についても模索。 |
さらに、 同クリニックで行なうのは、 "患者の心に入り込む医療"だ。 「喫煙行為を例に挙げると、 たばこの害悪を説明したり、 生活面での指導をしたりするのは病院のすることです。 でも私の場合、 患者をその気にさせることに主眼を置きます。 『奥さんも子供もいるんだよね。 家族がかわいそうじゃないのかな』 という感じで、 その人の置かれている立場や状況を見ながら、 微妙にくすぐっていくんですよ。 これは病院ではなかなかできません。 治そうとか改めようといった心構えを患者に対して作ることができなかったら、 私の医療は失敗なんです」。
また、 柳氏は患者のカウンセリングを重ねるにつれ、 心の分析が深まり、 それとともに人にとって、 あるいは自分にとっての幸せな生き方のあるべき姿について模索するようになった。 そこで同氏はクリニック内の待合室により深いリラックス感を演出するためにティーサロンとアトリエスペースの役割を与えた。 そこでは、 人間関係やストレス、 自分の生き方などで悩んでいる人の心が軽くなるちょっとしたヒントやアドバイスとなるような言葉が出版物やハガキになって陳列されている。 これらの言葉は全て柳氏自らで編んだものだ。
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アロマセラピーも導入。関節や腰のマッサージには有効。 |
また、 同クリニックでは、 診療の一科目ではないが、 週に一度、 患者の気分転換のために協力してもらう形でセラピストを招き、 別室で客対応に当たらせる。
アロマセラピストの吉田氏は 「ちょっとしたこりや痛みをやわらげてあげる、 みたいな感じでお客様に接することが多いです。 それと皮膚など美容面の相談をされる方が多いですね。 ですから精油を調合して化粧品を作ってさし上げたりすると喜んでいただけます」と語る。
柳院長は、 従来の民間療法に手軽で、 美しく、 おしゃれな印象を与えた点が、 アロマがセラピーとして普及した要因と見る。
「アロマといえば癒しのイメージが強いですが、 関節とか腰のマッサージには有効です。 これを漢方薬でやると、 くさい、 汁で汚れるなどの点でマッサージには適しません。 でもアロマの精油だといい香りがする、 汚れないなどの面で導入しやすいですね。 漢方でも葉っぱを貼って治療する方法もありますが、 これも格好よくない。 葉と同じエキスを持つアロマのジェルを塗ればちょっとすてきなイメージが出ますよね」 。
柳クリニック
プロフィール
柳 一夫 (やなぎ・かずお) 1982年防衛医大卒。 赤坂見附前田外科病院外科、 亀田総合病院心臓血管外科医長を経て1994年より新東京病院外科勤務、 1997年より外科長として在職中。 1999年に柳クリニックを開設し、 院長職兼務で現在に至る。 |
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(Medical Nutrition 68号より)
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