食こそ治療の土台。
糖尿病にはタマネギを指導。

 文京第一医院

予備軍も含めて1620万人――今や国民病にもなっている糖尿病。 完治が難しいだけでなく、 合併症をも引き起こす厄介な疾病だけに、 普段の食生活には細心の注意が必要だ。 東京大学の程近くにある文京第一医院 (東京都文京区) では、 食事療法を軸として血糖を低下させる機能性食品を指導、 臨床応用で成果を挙げている。 曜日によっては午後10時までの夜間診療も行う。 同院の斉藤嘉美院長を訪ねた。


 タマネギの含硫有機成分に注目。

もともと斉藤院長は東大病院の講師だったが、 退官後は診療所で院長を務めている。 日本血液学会の指導医も務める斉藤院長は、 今でこそ糖尿病治療としてメジャーになっている食事療法を東大時代から実践していた。

斉藤院長によると、 血糖低下作用に期待できるのはタマネギやグァバ葉、 桑葉などの素材。 なかでも、 毎日摂取しても飽きなく、 安価で日常的に入手できるタマネギを推奨する。 1日4分の1玉の摂取が糖尿病改善には良いとされるタマネギだが、 毎日4分の1玉の摂取が難しい場合だってある。 そのため、 最近では手軽に摂取できるサプリメントを指導するケースも増えているという。

では、 タマネギのどの成分が血糖低下に期待できるのだろうか。 「数100種類ある含硫有機成分の相乗効果により、 血糖が低下すると考えられます。 具体的には、 イソアリイン、 サイクロアリイン、 プロピルアリルジサルファイド、 S−メチルシスティンスルフォキサイドといった成分ですが、 イソアリインはタマネギに含まれている酵素アリナーゼと反応してできるチオスルフィネートには高い血糖低下作用があります」 (斉藤院長)。 現在、 タマネギの血糖低下作用で確認されているのは、 空腹時の血糖低下と食後血糖降下の2つの作用。 特に食後血糖降下作用に関しては、 糖尿病歴5年以上で薬物療法を受けている血糖値コントロールが困難な11症例 (第1回試験) と無作為抽出した22例 (第2回試験) を被験者として臨床試験を実施している。

それぞれタマネギ濃縮乾燥粒 「ビタオニオン」 ((株)龍泉堂社製) を早朝の空腹時に20粒ないしは早朝・夕食前の空腹時に各10粒ずつ16週間連日経口投与させ、 食後2時間後の血糖値を測定したところ、 服用4週間後で投与前に比べて40mg/dL、 73mg/dLとそれぞれ有意に低下していることが分かった。


 桑葉やカボチャとの併用がタマネギの血糖低下を促進。 

このように、 血糖低下作用に大きな期待がかかるタマネギ。 しかし、 斉藤院長は他の血糖低下素材と併用することで、 より効果が促進した例を臨床試験で経験している。 そのひとつが桑葉。 含有サプリメントを用いたヒト臨床試験では食後高血糖抑制効果を確認、 糖吸収の抑制とインスリン抵抗性の改善により血糖低下の相乗効果がみられた。

さらに最近、 タマネギとの相乗効果が期待できる素材として斉藤院長が注目しているものにカボチャがある。 高血圧と糖尿病を罹患している8名 (男3名、 女5名) を対象に、 カボチャ・タマネギをミックスさせたサプリメント 「南瓜オニオン」 ((株)龍泉堂社製) を朝食・夕食前10粒ずつ16週間摂取させ、 血圧と血糖値を測定したところ、 血圧の有意な低下がみられたと同時に、 タマネギ単体よりも著しい食後血糖の低下もみられた。

「ACE阻害剤にもインスリン抵抗性を改善させる作用が分かっていますが、 南瓜オニオンにも同様の作用機序が期待できます。 アンジオテンシンII産生を抑制してインスリン抵抗性を改善させるというメカニズムは、 従来の食効における血糖低下のメカニズムにはなかったもので非常に興味深い内容です」 ――糖尿病の場合、 高血圧を併発するケースも多いため、 このような場合には朗報といえるでしょうと斉藤院長は解説する。

予防を啓発する臨床医も大事 薬物療法よりも、 運動療法や食事療法が疾病治療の土台とならなければいけないというのが斉藤院長の持論。 その意味で医薬品依存の傾向に注意を促す。

「私たち臨床医は、 疾病を治療することに主眼を置いていますが、 事前に予防できればそれに越したことはないでしょう。 糖尿病のように罹患してしまうと合併症を引き起こす場合だってあるわけですから。 そう考えると、 予防医は今後ますます必要になってくるのではないでしょうか」 (斉藤院長)。


プロフィール
斉藤嘉美 (さいとう・よしみ)
1932年東京生まれ。 東京大学医学部卒業。 東京大学医学部講師を退官後、 同院院長に就任、 現在に至る。 日本脈管学会評議員。 日本血液学会認定医・指導医。

(Medical Nutrition61号より)


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