併用の意義 十分にあり。一般病院での「健康食品」とは。
 東急病院

東急目黒線と大井町線が交差する大岡山駅近くの東急病院。昭和28年の開院以来、東急関係者のほか一般にも開放され、沿線のホームドクターとして親しまれている。そんな市中病院で、健康食品はどのような位置にあるのだろう。副院長の筋野甫医師を訪ねた。


 がんに対して有効と考え、キノコとサメ軟骨をアドバイス。

「病院として(統合医療に)積極的に取り組んでいるのではありません。患者さんから相談を持ちかけられた時に、いくつかの健康食品の摂取をアドバイスする程度です」。筋野医師は現状から話してくれた。

現在は、週5日の一般内科外来と、週3回の肝臓専門外来を担当。肝がんは内科でフォローすることもある疾患で、患者から健康食品について相談を受けることが多いという。健康食品がいろいろある中で、どのようなものがあり、どこのメーカーの製品がよいか、実際にがんが治るのか――医師に聞きたくても聞けないケースが多い中で、一般病院でも相談が可能という態勢は、貴重な受け皿だ。

筋野医師は「健康食品による副作用がなければ、十分に付加する価値はある。患者が希望するならば使用してもよい」との立場をとっており、併用を認めている。具体的なアドバイスを求められた場合は、アガリクス・ブラゼイと液体サメ軟骨エキスの名前を挙げる。前者には免疫力を上げる働きが、後者は血管新生抑制作用があり、がんに対して有効と考えられるからだ。


 化学療法の副作用が軽減。併用の意義あり。 

実際、これらを摂取した患者で、吐き気、食欲不振がすぐによくなった例を経験している。「まずは1ヵ月使ってみること。その間に何らかの兆候が見られれば続けてみる。不都合があればすぐに中止する。そんな原則で進めていくと、確かに調子のいい人が出てくるのは事実です」。副作用が軽度ですむ、体調がよい、食欲が出る。そうなれば化学療法を完遂できる可能性も高くなるわけで、十分に併用の意義があるだろう。

ただし、と筋野医師は付け加える。「がん細胞そのものへの効果は、わからない、あるともないとも言えないというのが正直な意見です」。それゆえ、西洋医学に取って代わるものではない。さまざまな治療戦略の中で、組み合わせて使うのが合理的なやり方だ。

現在、肝がんの原因はウイルスだと突き止められている。C型肝炎、B型肝炎から肝硬変、そして肝がんへとたどる経過を、途中で食い止められればよい。近年は、抗ウイルス剤の導入で、ウイルスの除去が可能となり、自然経過を遅らせることが可能になってきた。肝心なのは、肝機能を正常に近く保持すること。小さいうちに発見すれば、内科的治療や手術などで対応できると言う。日常生活については、「ありふれたことですが、バランスのよい食事、適度な運動を心がけるよう指導しています」。


 もとをたどれば同じ。健康食品にもさほど抵抗はない。 

筋野医師が健康食品に関心を持つようになったきっかけは、あるメーカーからアガリクス・ブラゼイのモニター試験を依頼されたことだった。7、8年前のことで、「そのメーカーは、基礎的な研究に熱心で、成分分析表を始め、データをそろえて持って来ました。そこで、何人かの患者に勧めてみたところ、良好な結果が得られました。その後、相談があった場合には勧めるようになったのです」と振り返る。

「そもそも私の専門である肝疾患の治療薬には、強力ミノファーゲン(甘草)、ウルソデオキシコール酸(熊の胆)、さらには漢方薬の小柴胡湯と、自然に由来するものが多いのです。現代医学で評価の高い抗がん剤、ドセタキセルやパクリタキセルにしても、起源は植物。西洋医学的視点での大規模スタディがないとか、製造工程が医薬品と食品では異なるといった差はありますが、もとをたどっていくと、同じところにいきつく。そう考えると、健康食品にもさほど抵抗はありませんでした」。

それにもう一つ、丸山ワクチンの経験もある。丸山ワクチンが論議を呼んでいた時代、これを否定する意見もあったが、筋野医師は希望する患者には投与していた。「効いた印象はありませんが、いま健康食品を受け入れているのは、そのときの記憶もあるのかもしれません」


 健康食品単独の効果は判定しがたい。求められる日本のデータ。 

現在進行中の「健康食品に係る制度のあり方に関する検討会」で、日本医師会が健康食品に異義を唱えたのは記憶に新しい。そのように健康食品を否定する医師がいる一方で、全面的に取り入れた自由診療のクリニックもある。今後、一般病院での普及は進むのだろうか。「そのためには日本人を対象とした臨床データが求められます。健康食品といえども、評価は必要ですから」と筋野医師は語る。

例えば抗がん剤なら、作用のメカニズムがハッキリしている。一方、健康食品の場合は、免疫能や自然治癒力を上げていると考えられるが、それがどの程度まで症状の軽快に関与しているかは分からない。ましてや、一般にがん患者は化学療法、放射線療法を併用していることが多く、健康食品単独の効果は判定しがたいというわけだ。しかし、そのままでは状況は進展しない。すでに学会レベルで評価に乗り出す動きもあり、データが蓄積してくれば、納得する医師も増えてくるだろう。

もう一つの問題は、値段が高いこと。液体サメ軟骨エキスを1日2本摂取するとすると、1ヵ月でおよそ10万円の負担となる。「メーカーには、もっと安くしないと普及しないよと話しています」。

「がんの治療には、何が奏効するか、いまだ不明の部分もある。副作用がなければ使ってみてよいのではないか」。多くの症例を診てきた上での結論だ。


プロフィール
筋野 甫(すじの・はじめ)
昭和54年、慈恵医大卒業。平成元年より東急病院内科勤務。専門は消化器疾患(特に肝臓、胆嚢、膵臓疾患)。

(Medical Nutrition 53号より)


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