「治す」より「気づき」へ、多面的にみる医療を。
ホロス松戸クリニック

 うつ病、統合失調症(精神分裂病)、パニック障害などの疾患を耳にする機会が増えてきた。いかに現代人が心を病んでいるかわかる。この分野で、院長自身の体験を踏まえつつ全人的な医療を行う施設。それがホロス松戸クリニック(村上信行院長)だ。


 親子関係のトラブルや男女関係のもつれも。門戸広がる心のクリニック。

同院に診察に訪れるのは、1日40〜50人。インターネットや口コミで患者は増加傾向にあるという。なかでも多いのは、うつ状態、うつ病、神経症、対人緊張感、パニック障害、境界型人格障害など。中には明らかな疾患名がつかない人もいる。「子供を生んだはいいが育てられない女性や、親子関係のトラブル、男女関係のもつれの方もいらっしゃいます。『彼氏と別れたいが、別れられない。一緒にいると怒ってしまう。どうしたらよいか』と相談に見えるのです」。

診療の基本姿勢は「治すよりも、気づきを助ける」。診断名がつこうがつくまいが、根本は共通している。

「先ほどの男女の悩みの相談者でも、ゆっくりお話しし、『何に対して怒るのか考えてみよう』ということになって、怒りが静まり彼とうまくやっていけるようになりました。精神科医ですから、患者さんの心の中はある程度は見えます。それを指摘して、潜在的な葛藤に気づいてもらいます」と村上院長。しかし、それには時間がかかり、医師として使うエネルギーも膨大になるという。

治療に対しては、その種類、作用、発現までの時間、副作用などについてじっくりと説明するよう心がけている。基本的には、うつ病にしろ統合失調症にしろ、まず薬物治療を考慮し、効果が不十分な場合にサプリメント療法を選択する。もちろん、患者の希望を最大限尊重する。


 うつ病や統合失調症の治療に効果。ナイアシンで薬剤減量。 

村上院長が最近注目しているのは、ナイアシン(ニコチン酸)のサプリメント。魚、肉、豆類などに含まれる、ありふれたビタミンだが、うつ病や統合失調症の治療目的にビタミンB群やマルチビタミンと併用すると、効果が見られるという。早い人は数日で自覚症状に変化が見られる。特に統合失調症の患者は、一般におびただしい量の薬を服用しているが、ナイアシン3g/日の併用で、薬剤の減量に成功することも珍しくない。まさに「山盛りの薬が、どんどん減っていく」印象だ。すでにうつ病十数例、統合失調症数例に使い始めている。

村上院長は、オリジナルのハーブも作っている。バレリアン、カモミール、リンデンなど催眠鎮静作用のあるハーブをミックスした「グッドスリープ」、高麗人参、ジンジャー、イチョウ葉エキスなどを配合した「リフレッシュ」である。


 内的体験を引き出し、認知できない部分を認知。集団療法で自己啓発。 

薬やサプリメントによる治療とは別に、同院には週2回、グループセラピーの時間もある。自己実現、自己表現のためのトレーニングだ。「単に患者の話を聞いて、口頭だけのアドバイスをし、薬を出して終わり――ではなく、内的体験をきちっと引き出させることを目指したい」との院長の方針が現れている。毎回10名程度が参加し、さまざまなグループセラピーを体験する。

「断りたいが断れない。伝えたいが言えない。人前で上がってしまう。そんな経験は誰にもあるでしょう。そのままにしておくと、同じ状況でトラブルが起き、同じ結果が繰り返される。その原因は、内的な感覚、希望、夢が抑圧されているからです。セミナーによって内的体験を引き出し、認知できない部分を認知するようにもっていく。これに月2回程度参加し、半年〜1年続けると成長しますよ」。


「巷で行われている『自己啓発セミナー』とは異なるものです。それらはどちらかと言うと、意識を高揚させる方向に働く。しかし、グループセラピーは、もともとの自分、ありのままの自分に気づくのが特徴。『なあんだ。のんびりしていてよかったんだ』というわけです」。

 バックパッカーから精神科医へ。 

村上院長は医大生の頃、欧州、中近東、インドとバックパックで各地を旅したことがある。院長自身が対人恐怖症で悩み、行き詰まりを感じていた時に、新しい自分を探したのだ。精神科に入局したのも、「心を解明するとどうなるのか」と思ったのが大きいと振り返る。

そうした経験を踏まえ、「精神科医は病気だけを診ているのではないか」とあえて苦言を呈す。村上院長によると、サイコセラピーのトレーニングを熱心に行っている大学はほとんどない。ましてや、精神科医は精神科以外のことは分からないし、病んだ心を自分で想像することができないというのだ。「医師に限ったことではありませんが、外から日本人を見ることは大切。私自身も、病気や海外放浪の経験が、多面的にモノをみることに役立っていると思います」。

温泉療法医でもある村上院長。患者の治療ばかりではなく、自らも温泉で癒されているという。「普段の診療でストレスを感じることがありますね。そういうときは温泉にでもつかりに行きます。つかるだけではなく、森林、生態、水源を見ることで、『全体の営み』を学ぶのです」。


プロフィール
●村上信行(むらかみ のぶゆき)
昭和23年生まれ。東京医大卒業後、同大精神科入局。専門は精神病理学。

(Medical Nutrition 52号より)


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