健康長寿目指し、抗加齢医療を実践。
 日本鋼管病院

日本鋼管病院(川崎市川崎区)では、2001年11月から「老化度判定ドック」を提供している。骨密度、ホルモン分泌、血管年齢などをチェックして、健康長寿の指針にしようというものだ。開始以来マスコミでも頻繁に取り上げられ、一時は受診が6ヵ月待ちになるほどだったという。考案者の米井嘉一医師(内科医長兼人間ドック脳ドック室部長)に概要を聞いた。


 心身ともに最も生き生きとした状態「最善の健康」を意識。

抗加齢医学が目指すのは、「不老不死」ではなく「健康長寿」。病気のある人は治し、健康な人はそれを維持・増進して、ヒトの寿命である120歳までQOLを高めながら生きることである。

そのキーワードとして、米井医師は「オプティマルヘルス」を提唱する。直訳すると「最善の健康」の意味だ。「それぞれの年代において心身ともに最も生き生きとした状態を示します。とはいえ、70歳でオプティマルヘルスを実現するには、60歳、いやもっと前から努力しておかねばなりません。若い頃の健康の延長線上に健康長寿があるのです」。

では、若い頃のどの時点を基準にしたらよいか。米井医師が掲げるのは30歳。この年代が心身ともに最も健康で、ホルモンバランスがよく、生産性など社会的にも充実しているからだという。


 若さを保つホルモンの検査が含まれている老化度判定ドックで弱点を。 

老化度判定ドックは、従来の人間ドック1泊2日コースのオプションとして設定された。自由診療で3万円。検査項目は(1)骨密度(2)血管年齢(3)血中ホルモン濃度(4)脳機能(5)QOL――の5つの分野から選択されている。

老化度判定ドック

(1)骨年齢の測定
(2)血管年齢の測定(指尖容積脈波)
(3)血中ホルモン測定
 IGF-I、DHEA-s、性ホルモン、コルチゾル、インスリンなど
(4)高次脳機能検査
 判断力、反射神経、運動などの状態の測定
(5)問診(QOL問診表による)

特徴的なのは、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)やIGF-I(インスリン様成長因子)といった、若さと健康を保つのに不可欠なホルモンの検査が含まれていること。周知の通り、前者は副腎で作られ、さまざまなホルモンの源。主に肝臓で作られる後者は、成長ホルモンと協同で組織の成長を促す。これらは加齢とともに顕著に減少し、「エネルギーの低下」「皮膚のつや、はりの低下」「性的ときめきの低下」など、一般的な老化の兆候に関与していると考えられる。

また、高次脳機能検査はパソコンの画面を見ながら行い、判断力、反射神経などを測定する。物事へのこだわり具合、短期記憶を反映するほか、痴呆の早期発見にも役立つ。

QOLの評価は米井医師オリジナルの問診表を使用。「目が疲れる」「集中できない」といった労働者に多い症状を参考に作成したもので、心と体の双方をチェックする。

さて、これらの結果をどう解釈するか。米井医師はこう説明する。「百歳以上の長寿者の研究では、決して彼らの老化スピードが遅いのではなく、身体全体が均質に老化していくことが明らかになっています。そこで、先ほどの30歳のオプティマルヘルスを保つための目標検査値を『オプティマルレンジ』として設定。そこから大きく外れた部分を、『修正可能な弱点』と考えるのです」。

  QOLがどれだけ改善するか、まず食事・運動・心。 

老化度判定ドックで弱点がわかったら、表2のような手順で抗加齢医療を行う。ドック受診者の半数程度は引き続いて抗加齢医療を受けるという。「基本は食事療法・運動療法・精神療法。その上にサプリメント療法があり、成長ホルモンは最後の選択肢」と米井医師。

表2 医療の流れ

(1)食事指導・運動指導・精神指導などを行い、1年後再検査。
(2)上記(1)+サプリメント指導を行い、6ヵ月後再検査。
  QOL(共通問診表を使用)の評価。
(3)上記(1)+薬物療法(メラトニン・DHEA)を行い、
  3〜4ヵ月ごとに血液検査。QOLの評価。

成長ホルモンの分泌は、さまざまなライフスタイルによって影響されるため、土台として生活習慣の改善が重要なのだ。そのため、まずドックメニューに含まれるカウンセリングで、1時間ほどかけて指導する。中心は、高たんぱく・高アミノ酸食、適正体重の維持、運動、質の高い睡眠の確保。

「アミノ酸は神経伝達物質の材料になったり、成長ホルモンの分泌を促したりする重要な栄養素ですが、高齢者の食事はさっぱり目、炭水化物主体となって、たんぱく質が減少するようです。肉、魚、大豆とバラエティに富んだ食材からのたんぱく質摂取を心がけ、サプリメントも使いながら1日70gを確保するよう指導しています。また、インスリンはIGF-I の産生を抑制するので、血糖値を厳重にコントロールしなければなりません」。

サプリメントは優先順位を考えて摂取する。(1)マルチビタミン・ミネラル(2)抗酸化栄養素(3)個人の悩みに応じたサプリメント――だ。サプリメントについては、品質や有効性・安全性が確保された医療用グレードを用いる。

6ヵ月ほどしてもQOLに改善が見られなければ、DHEAかメラトニンの補充療法の適応となる。睡眠サイクルに関与するメラトニンも加齢とともに減少するからだが、同時に抗酸化作用や免疫増強作用も期待できる。「これらの対応で、IGF-I が20〜30%増え、QOLの改善が見られます」。

米井医師は、日本抗加齢医学会の事務局長を務める一方、自ら米井抗加齢研究所を主宰し、抗加齢医学の健全な普及・発展に力を注いでいる。研究所ではサプリメントの評価も手がける。

「これまではメーカーごとに違った尺度でデータを出していて、消費者はもちろん臨床医でも製品の特性が分かりづらかった。実際にQOLがどれだけ改善するか。医療用途のサプリメントには、そのデータが求められているのです」。米井医師は力を込めて語った。


プロフィール
米井嘉一(よねい・よしかず)
昭和33年生まれ。慶応大学医学部卒業。近著に『イラスト図解 老化と寿命のしくみ』(日本 実業出版社)。

(Medical Nutrition 51号より)


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