西洋医学にアロマセラピー、イメージトレーニングを融合
 宏昌(こうじょう)クリニック

JR五反田駅前の「宏昌クリニック」は心療内科、内科、皮膚科、美容外科をすべて室塚あや子院長が担当し、結婚相談所までも併設するユニークな診療所だ。身体症状と心の問題が密接な関係にあることから、風邪やアトピーで来院した患者に、心療内科領域のケアを行う場合も多いという。イメージトレーニング、漢方、アロマセラピーを用いた診療で、なるべく西洋薬を控えるのが特徴だ。「トータルな医療を実践するのが夢だった」という室塚院長に話をうかがった。


 重度のアトピー性皮膚炎がアロマセラピーで改善

「なんでも診ます。アフリカにいたので、これはできませんと言っていられませんでした」という室塚院長は、かつて、外務省の一等書記官としてアフリカに赴任し、様々な病気の診療を担当していた。そこで出会ったのがハーブドクター。どんな治療をするのだろうという好奇心から勉強を始めたのが、アロマセラピーを始めるきっかけとなった。

「アロマセラピーはアレルギー疾患や高血圧などの患者さんに使うことが多いです。重度のアトピー性皮膚炎でも、アロマセラピーだけで改善し、ステロイドを止めることができた例があります」と、室塚院長。これは、ステロイドを止めたいと強固に主張したアトピー性皮膚炎の患者のケースだ。クリーム基剤にティートリーのエッセンシャルオイルを混ぜて患部(ほぼ全身)に塗布した。通常のアロマセラピーは植物油で希釈することが多いが、べたつくため、アトピーにはクリーム基剤のほうが適しているというのが室塚院長の説。最初はリバウンド症状が現れたが、まもなく全身にあった赤みが消え、かゆみもなくなった。このようにして、ステロイドを完全に止めることができた。また、ADHD(注意欠陥多動性障害)の子供には鎮静作用のあるエッセンシャルオイルを混ぜたクリームを少し鼻の入り口に塗るだけで、穏やかになるという。保育園の保母さんにクリームを渡しておき、定期的に塗ってもらって治した例もある。室塚院長によると、アロマセラピーの難しさは、匂いの好みと薬効が必ずしも一致しないことだという。だから、好きな匂いを患者に選んでもらい、それにプラスして患者に適した薬効のあるエッセンシャルオイルを混ぜて用いる。


 夢や目標をイメージすることが治癒につながる 

また、室塚院長は夢や目標、楽しみをイメージすることの大切さを主張し、「イメージトレーニング療法として、私の治療の大きな柱となっています」と語る。アトピーの患者も、心療内科に来る自殺未遂の患者も、自分の夢や目標がイメージできるようになる頃には症状がほとんど改善しているという。「イメージできるようになるまでが長いのです。何度もカウンセリングの時間を持ち、家族や育った背景など、とりとめもない会話を重ね、徐々に自分に直面することができます。それを繰り返すうちに、次第に自分の夢や目標が見えてくるのです。さらに、それをビジュアル化できるまで続けます。この過程は結構長くかかりますが、とても大切なことです」。室塚院長は患者の話をゆっくりと聞くことを重視している。これは、ハーバード大学で心理学を学んでいた頃、病院に勤務する心理療法士が患者に治癒のイメージを持たせることで治療効果をあげている例を目にしてきたからだ。

「『自分イコール病気』になっている人がいますが、病気は自分の一部でしかないのですよ。ちょっと病気かもしれないけど、自分にはこんな目標がある――この思いが治癒につながります。例えば、同じがんのステージでも予後の良い人と悪い人がいるのは不思議です。もしかしたら、イメージが大きな役割を果たしているのではないでしょうか。私自身、朝と昼の2回、イメージトレーニングを実践しています。単語を頭に浮かべるだけでいいのですよ」


 ダイナミックな統合医療を実践 

同クリニックは、室塚院長が長年イメージしてきた「トータルな医療」を提供する場所だ。「勤務医の時から多くの人を治療してきましたが、病気は複数の診療科にまたがっていることも多く、一つの科だけでは治せない場合もあります」。

薬剤、アロマセラピー、漢方で身体症状を改善しながら、心の悩みも聞き取り、より良い自分をイメージできるように患者を導く。この病気の時にはこの治療法というように、最初から決めているわけではない。室塚院長が実践する医療はまさに統合医療であり、オーダーメイド医療と言えるのではないか。

また、同クリニックでは1フロアを保険診療の内科、心療内科、皮膚科部門と、自由診療の美容外科部門に分け、その他結婚相談所も開設している。美容外科ではレーザー脱毛、ケミカルピーリングを行い、美容の相談も行っている。結婚相談所では、相談者にふさわしい配偶者の選択に力を注ぐ。まさに、「トータルケア実践の場」だ。

「人間には様々な側面があり、その人の考えや背景に触れないと、本当には治せないのです」と室塚院長は語っている。


プロフィール
室塚あや子(むろづか・あやこ)
1976年、北里大学医学部卒業。84年から行政官として日本各地で予防医療に携わる。国立公衆衛生院研究生。86年、盛岡短期大学非常勤講師を兼務。87年、米国ハーバード大学で心理学を学ぶ。91年、外務省一等書記官兼医務官。アフリカのナイジェリア、ガーナ、カメルーンに派遣。93年、米軍座間診療所に勤務。94年、フィリピン派遣、日本人医療に携わる。2000年秋、宏昌クリニック開業。

(Medical Nutrition38号より)


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