発想の転換、現代病を食事で治す「食養内科」とは?
 松井病院 食養内科

「食養内科」。全国でも珍しい院内表示を掲げる松井病院(東京都大田区)では、様々の難治性疾患に対して食の改善によるアプローチを行っている。全国から集まる患者の診療にあたっている長岡由憲部長に聞いた。


 アナタは脂肪と砂糖の摂り過ぎ、大丈夫!?

「アトピー性皮膚炎(AD)にしろ自律心経失調症にしろ、本当によく治りますよ」と語る長岡医師。ADをはじめとして、肥満、摂食障害、糖尿病などの現代病は食事の影響が大きいというのが持論だ。

特に、脂肪と砂糖の摂りすぎが関与していると指摘する。「現代人を見ると、昔の『もてなし料理』、つまりハレの日の食事が日常の食事になっています。これらは脂肪、糖分、アルコールの摂り過ぎとなり、食の乱れが皮膚に出たり、心に出たりするのです」。

それゆえ、摂食障害、自律神経失調症といったメンタルな疾患でも、食からのアプローチが基本だ。

 食養の注意20か条で「日野式食養」

「一人の患者の診療には、医師と栄養士がおよそ15分ずつをかけてあたっている。初診の際には1週間の食事メニューを書き出してもらうなど、さらに多くの時間をかける。指導の中心となるのは、日野医師が提唱した食養の注意20ヵ条。

日野式食養法20カ条

  1. 食品添加物の摂取にはじゅうぶん注意する。
  2. 農薬使用の食品についても注意を払う。
  3. 合成洗剤の使用は慎重に。
  4. 精白穀物、精白糖、精製度の高い食品は要注意。
  5. 動物性たんぱく質のみを尊重しない。
  6. 野菜、ことに緑黄色野菜の摂取に努める。
  7. 海草を常食する。
  8. 脂肪を適量とる。
  9. 各種ビタミン、ミネラル、その他すべての栄養素のバランスに注意する。
  10. その土地で、長年収穫されてきたものを、旬の季節に、新鮮な状態で、偏らず順ぐりに摂取する。
  11. 一物全体食に努める。
  12. 煮こぼし、ゆでこぼし、あく出し、穀物のとぎ洗いはほどほどに。
  13. 生食がよいとか、または2分間煮や、長時間の加熱食がよいとか、とらわれるべきではない。果物食の可否についても同様である。
  14. 塩分や水分の摂取量についても同様で、とらわれるべきではない。
  15. 各食品の持ち味を生かして料理する。砂糖、人工調味料などを無批判に用いない。
  16. 過熱、過冷のものや、香辛料、刺激物、アルコール飲料を多量、頻繁に用いない。
  17. 清涼飲料水、缶詰、インスタント食品類も、多量、頻繁に用いない。
  18. 空腹でないのに、漫然と食事をしたり、就寝前約2時間以内に飲食することは避ける。
  19. よくかみ、心からじゅうぶん味わって食べる。
  20. 食事直前・中・直後に、湯茶などを多量に飲まない。

もっとも、最初から20項目すべてを完璧にやろうとすると失敗するので、出来るところからやるようにアドバイスするのがコツだという。「固定した食餌療法ではなく患者さんそれぞれに応じて融通を利かせます。押し付けではなく、患者さんに判断させること。そうすれば自然と自分の体に良いものが分るようになりますし、そのころには病気も治っています」。

初診の患者はおおむね1週間後に再来。検査所見や食事メモを見ながら、病状を説明して治療方針を話す。重症例では入院加療を要することもある。同院には一般内科や外科の医師もおり、他科との連携が取りやすいのも重症患者には適している。また食事療法の教育入院も行っており、日野式食用の実際を互換で体験できる。

 重要なのは発想の転換!

現代では、栄養不足で起きる急性疾患より、むしろ栄養の過剰によってもたらされる慢性疾患が主流を占めるようになった。「医療においても発想の転換や視点を変えることが必要です。すなわち、臓器だけを診て即効的、特効的な治療をするのではなく、人間全体を診てそのバランスを整えながら、病気にならない体づくりを目指すほう意がよい思います。例えば、腎疾患の患者がくると、当然腎臓に着目して治療しますが、漢方医は『腎は放おって置いて、腎を支えるほかの臓器を治す。そうすれば腎は自然に良くなってくる』というのです。人体を小宇宙と捕らえる漢方ならではだと思いました」。

とはいっても「西洋医学がだめで自然療法はすべて良い」「玄米は良くて白米は悪」といったオール・オア・ナッシングではない。それぞれの長所・短所を理解し、患者ごとに柔軟に適用する。西洋医学と漢方の双方を習得した長岡医師だからこそ取れる立場といえるだろう。

「食養は(1)誰でも出来る(2)お金がかからない。それに(3)効果的であることから、統合医療の中で重要な位置を占めると思います。そもそも、1日3回ずつ数十年にわたって繰り返されるのが食生活ですから、それが乱れて体に変調をきたすことも容易にうなずけるでしょう」。

プロフィール
長岡由憲(ながおか よしのり)
昭和23年生まれ。昭和49年鳥取大学医学部卒業、岡山大学第二内科入局。昭和52年、北品川病院に勤務。日野厚医師のもとで全人的医療を学ぶ。昭和53年、日野医師とともに松井病院に食養内科を開設。平成7年、同科部長。

(Medical Nutrition 26号より)


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