「響き合う医療」への道 大阪市大病院皮膚科 小林裕美助教授
アトピー性皮膚炎(AD)などの難治性皮膚疾患に対して、大阪市立大学医学部付属病院(大阪市阿倍野区)の皮膚科は、西洋医学的治療に加えて漢方薬と食養生を取り入れている。同科では補完代替医療(CAM)を、「通常の現代西洋医学教育で教えられていない医学医療の総称、または西洋医学の範疇に存在しない医学医療の総称」ととらえ、西洋医学とは別の視点も踏まえて、患者本位の治療を行う。西洋医学と補完代替医療、基礎研究と臨床研究、そして医師と患者が「響き合う医療」の現場を訪ねた。
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医療イコールCAM |
大阪・ミナミの繁華街にそびえ立つ大阪市大病院。皮膚科外来には毎日200〜300人の患者が訪れる。そのなかで、アトピー外来、漢方外来を担当するのが小林助教授だ。同科には、山本巖博士(山本内科院長)の指導のもと、皮膚疾患の東西融合治療に取り組む伝統がある。そのため小林医師にとっては、「医療は本来CAMを含むもの。患者さんのことを考えれば漢方薬などの補完医療や、医食同源の考えがあたりまえでした」という。
日々の診療現場でも、「○○という健康食品を試してみたいのだが」「どんな食事をしたらよいか」という患者からの問い合わせは多い。それに対する姿勢はこうだ――病気を治そうと患者さんが前向きに研究しているのに、それを無視するわけにはいかない。反面、皮膚科ではアロマオイルによる接触皮膚炎など、有害事象を診る機会もある。患者さんの状態を適確に把握するためにも、多くの代替療法に精通しておく必要がある。
CAMの中心は漢方薬と食養生で、小林医師の外来では7割以上の患者に西洋医学的治療と併用している。「ADの発症には患者のもつ素因、つまり内因の関与が大きいと考えられます。そこで、西洋医学的治療に反応の乏しい症例に、内因へのアプローチとして漢方薬を併用するメリットがあります」と小林医師は話す。
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漢方薬と食事でアトピーが長期緩解 |
ある36歳の男性(AD)は、他院でステロイドの内服、外用による治療を受けていたが増悪傾向を示し、同科を受診した。初診時には顔面の紅斑が著明で、四肢は紅色の苔癬化局面に覆われていた。同科では外用療法を継続した上に、食養生の指導、補中益気湯と五苓散の内服を併用し、2週間後には皮疹がかなり軽快した。その後も漢方薬の継続内服と食養生で、皮疹なしの状態を維持している。
ADのように緩解と増悪を繰り返す(シューブ)疾患では、一時的な軽快よりも、長期間観察してシューブの消失を以って有効と判定するのが同科の方針だ。 小林医師のグループは、補中益気湯を投与したAD10例のサイトカインの変動を調べている。その結果、慢性期のADで高値とされる血中IFN−γが、補中益気湯の投与で臨床症状の改善とともに有意に低下した。「補中益気湯は、東洋医学では『気虚』を改善する方剤として知られています。現代人における『気虚』とは、環境や生活習慣の変化により生じた生体の治癒機構の機能低下と位置付けられ、これを補い慢性炎症が改善されたと思われます」(小林医師)。

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食養生の4本柱 |
食養生は、・バランスの取れた和食を中心に、・甘いもの、油こいものを避ける、・米はなるべく精製度の低いものを食べる、・季節の野菜、魚、大豆製品を多く摂るように心がける――といったアドバイスをしている。「あれもダメ、これもダメという指導ではなく、身体に良いものを食べて、治癒力を高めましょうという方向性です」。
大学病院として、CAMの学術的検証も仕事の一つだ。食品、非食品を問わず、CAMに使われるものは安全性が絶対条件であり、その上で作用機序の検証、非臨床試験、臨床試験とステップアップしていくのが良いと小林医師は力説する。 同科の石井正光教授は2001年11月に大阪で開かれる第4回日本補完代替医療学会の会長であり、小林医師は準備委員長を務めている。「テーマは『響き合う医療への道』です。現代医療と補完代替医療、基礎と臨床、そして何より医師と患者が調和することで、真に患者さんに有益な医療が生まれるようにしたいものです。」(小林医師)。
プロフィール
小林裕美(こばやし ひろみ) 昭和58年、岐阜大学卒業、大阪市立大学皮膚科入局。昭和63年、大阪市立大学大学院終了。平成12年、同大助教授。 ●大阪市立大学医学部付属病院 大阪市阿倍野区旭町1-5-7 TEL:06-6645-2121(代) |
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(Medical Nutrition 24号より)
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