「健康」を取り戻すBOOCS(ブックス)
 横倉クリニック 横倉恒雄院長

最近、BOOCS(Brain Oriented Obesity Control System;脳指向型肥満調整法)という用語が学会やマスコミで聞かれるようになった。肥満の原因として提唱された「脳疲労」という概念と、その解消法だ。横倉クリニック(東京都港区)の横倉恒雄院長は、勤務医時代からこの理論を取り入れ、肥満や生活習慣病に効果を上げている。


 「BOOCSは人間が健康に生きるための方法」

BOOCSの創始者である藤野武彦・九州大学健康科学センター教授は、現代社会の過剰なストレスによる脳疲労から、五感、特に味覚異常を来し、摂食行動異常が生じる。その典型的な結果が、肥満であると主張する。

藤野氏は脳の悪循環を遮断するためには、禁止と抑制を解除し、心地よさを回復することが重要だとする。これらに従い、具体的には「快食時に好きなものを好きなだけ食べる」、「食べたいものは我慢しない」、「嫌いなものは食べない」ことを指示し、「空腹時も決して我慢しない」、「夕食を中心に快食する」、「運動は決して自分に強制しない」ことを指導する――これがBOOCSの概要だ。

慶応大学病院で産婦人科医として勤めた横倉氏は、今から10年前、東京都済生会中央病院に健康外来を新設した。当初の数年は横倉医師も従来型の健康指導をしていたが、藤野医師との出会いをきっかけに、BOOCSを導入した。「生活習慣を変えなさいと言うのではなく、なぜそのような生活習慣になったのかを見る。つまり、『人の肥満』ではなく『肥満の人』を診るのです」(横倉医師)。

 1日1回の「快食」

実際の指導は、まず夕食を楽しむことから始める。「食による快」を大脳に記憶させるために、少なくとも1日1回はゆっくりとおいしく食事を楽しむのである。昼に快食が可能な人はそれで構わないが、忙しい現代人では夕食の場合が多いだろう。たとえ遅い時間になっても、自分がおいしいと思うものを、好きなだけ食べる。BOOCSを継続すれば味覚が変わるので、健康に良いものが欲しくなり、健康に良くないものは欲しくなくなる。

朝はどうするか。食べたくないのに義務感で食べる必要はない。昔のように早寝早起きのライフスタイルならともかく、起きてすぐ食べるような現代人の生活では朝食は夜食になるため、紅茶や緑茶、味噌汁などの水分がよい。この時、ブドウ糖やミネラルが豊富な黒砂糖を摂ると、脳のエネルギー源に適している。

昼はサプリメントで栄養素を補う。空腹を感じたらおにぎり、うどん、リンゴなどを食べるのもよい。間食には黒砂糖、リンゴ、おにぎりなどが奨められるが、ケーキやお菓子が食べたければ、我慢せず夕食後に食べる。

 BOOCSの臨床評価は

横倉医師は、済生会病院での従来型の肥満治療とBOOCSを比較して、日本体力医学会などで報告している。従来型の治療は、1日の食事摂取カロリーを1400〜1600カロリーとし、「腹八分目の食事を心がける」、「間食は避ける」、「運動は有酸素運動として30分以上の歩行」などを指導した。

その結果、BOOCS群は体重、体脂肪とも従来の治療に比べて減少し、体重最大減少後のリバウンドも少なかった。また、総コレステロール、中性脂肪がBOOCS群で有意に減少した。一方、HDLコレステロールは従来型治療群で減少、BOOCS群で増加した。その他、BOOCS群では血糖値、心理テストの結果も改善した。

 健康法としてのBOOCS

「日常生活、つまり生きていることは、身体活動・精神活動・食行動の3要素から構成されています。その中心は脳で、これら3要素は五感で連絡されています。BOOCSは脳疲労をとり、低下していた五感を正常に働かせます。日常生活をごく当たり前に、生き生きと過ごせることが健康だとすれば、BOOCSはまさに『健康づくり』の唯一の方法なのです」(横倉医師)。

プロフィール
横倉 恒雄(よこくら つねお)
昭和49年、日本大学医学部卒業、慶応義塾大学産婦人科入局。昭和55年、東京都済生会中央病院産婦人科勤務。脳下垂体ホルモン研究で学位取得。平成10年、横倉クリニック開設。
 
●東京都港区芝5-13-13 サダカタビル3F
 TEL:03-3456-2705

(Medical Nutrition 19号より)


BACKSITE TOPPAGE TOP