薬物を使わず、“食事で疾病を治す”が基本 女子栄養大学栄養科学研究所 栄養クリニック 松田早苗講師
米国では一人の患者に医師、薬剤師、栄養士などがチームを組んで治療にあたるチーム医療が一般化しているが、日本でも30年以上前からチーム医療に取り組んでいるクリニックがある。女子栄養大学・栄養科学研究所の実践栄養部門である栄養クリニック(診療部長・安田和人氏)がそれだ。同クリニックでは、医師、管理栄養士、看護婦、運動指導員らが、個別プログラムをもとに食事内容やエクササイズの指導にあたっている。検査、診察までの流れは普通の病医院と変わらないが、治療に際しては薬物は一切使わない。“食事で疾病を治す”を診療コンセプトとする同クリニックを取材した。
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分かっていても変えられないのが食生活 |
糖尿病や高血圧症の治療は、食事療法が基本とされる。だが頭で分っていてもなかなか食生活を変えるのは容易ではない。そこで、医師や管理栄養士らが生活習慣病を予防する食生活の習慣づけをサポートするために行っているのが、「ヘルシーダイエットコース」と呼ばれる講座形式の健康管理プログラムである。コースは(1)検査、(2)診察、(3)講義、(4)栄養相談、(5)体操、(6)昼食――の6つのプログラムが組まれている。受講期間は週1回で3ヶ月間。コースの流れと内容は、以下のようになる。
まず血液、心電図、体脂肪量、骨密度などの健康状態をチェックした後に、医師が診察し、検査結果を踏まえて問題点と診療方針を説明する。次に管理栄養士が糖尿病や高血圧など生活習慣病に関する知識や食事のポイントをアドバイスし、体操指導員がダンベル体操やウォーキングを中心とした運動指導を行う。運動が終わると管理栄養士が調理した昼食を実際に味わってもらい、調理の工夫を身につけてもらう。最後に管理栄養士がマンツーマンで栄養相談に応じ、個人の疾病や生活習慣に合わせて「何をどのように食べるのか」を具体的にアドバイスする。
同コースの狙いについて、管理栄養士の松田早苗さん(女子栄養大学講師)は「減量を目的に来院される方もいますが基本は食事で病気を治すことです。高脂血症の人、血圧が高い人など、他の病院から紹介されてくる人も含めて、生活習慣病を治したり、予防するために来る人がほとんどです」と語る。
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成果あり! 3ヶ月間で中性脂肪などは改善 |
食事指導に際しては、女子栄養大学が考案した「四群点数法」と呼ばれる食事コントロール法を身につけてもらう。
四群点数法とは、食品を1群=カルシウム・タンパク供給源(乳・乳製品、卵)、2群=良質タンパクの供給源(肉、魚、豆、豆製品)、3群=ビタミン(野菜、いも、果実)、4群=エネルギー供給源(穀類、油脂、砂糖)の4群に分け、それぞれの食品を80kcalを1点と計算し、どの食品群を何点取れば良いのかを計算して理想的な食事を評価する方法である。
例えば、成人女性の1日のエネルギー必要量が1600kcalだとすると、80kcal=1点の計算では1日に20点ということになる。四群点数法で行くと、1群から3群までを3点ずつ計9点摂り、4群を11点摂ることが理想となる。
「1日に食べる量を何kcalという表現でなく、何点摂りましょうとすることで計算しやすくなります。1点を80kcalにするのは、80が非常に分りやすい数字なんです。例えば卵1個は約80kcalですし、ジャガイモも1個80kcalほどです。ですから80kcalは身近な数字なんです」(松田さん)。四群点数法では、1群から3群までを各3点ずつ摂るのが基本。4群は、その人に応じて調整する。
この手法で3ヶ月間食事をコントロールすると改善効果は顕著だ。ある女性グループ(40人)のデータを見ると、体重は66.4±11.9kgが3ヶ月後には62.5±10.6kgに落ち、T・CH(総コレステロール)は230±37.5mg/dlに低下、TG(中性脂肪)も115±51.7mg/dlから95±38.8mg/dlに下がっている。これまでに同クリニックで受講した約4000人のデータを統計処理すると明らかに有意差が見られるという。
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男性にもお勧め、ヘルシーダイエット |
同クリニックでは、「ヘルシーダイエット夜間コース」も開設している。男性にも参加してほしいコースだ。「男性の間には不規則な食事時間、アルコールにより体脂肪率の高い人、特に内臓脂肪型肥満が増えています。体脂肪率の高い人ほど生活習慣病にかかる危険が高いわけです。発病を防ぐためにも四群点数法でバランス良く食べることをしっかり身につけてもらうことが大事になります。そのお手伝いをするのが当クリニックの役割です」(松田さん)。
プロフィール
松田 早苗(まつだ さなえ) 1961年東京生まれ。84年女子栄養短期大学を卒業。同年伊藤病院に栄養士として勤務。勤務のかたわら女子栄養大学栄養学部二部卒業。94年女子栄養大学大学院修士過程卒業。同年女子栄養短期大学栄養学研究室助手として勤務。99年女子栄養大学・栄養クリニック専任講師。日本栄養・食糧学会、日本腎臓学会、日本脂質栄養学会、日本食生活学会会員。専門は脂質代謝と腎臓。 ●女子栄養大学栄養科学研究所 栄養クリニック 東京都豊島区駒込3-24-3 香川綾記念生涯学習センター2階 TEL:03-3918-6181 ●ヘルシーダイエットコースの主な内容 【検 査】血液、心電図、体脂肪量、骨密度など健康状態を細かくチェックします。 【講 義】糖尿病や高血圧など生活習慣病に関する知識や食事のポイントを学習します。 【体 操】ダンベル体操やウォーキングなどで、楽しく体を動かします。 【昼 食】栄養士が作成した昼食を実際に味わい、調理の工夫を学習します。 【栄養指導】マンツーマンで個人の疾病やライフスタイルに合わせて行います。 |
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(Medical Nutrition 10号より)
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