遺伝子解析で疾病リスクを把握 医療法人社団 博心厚生会 九段クリニック 安部博幸医師
疾病は、遺伝と環境、そして生活習慣などがそれぞれに関連して発現に至っていく。医療法人社団博心厚生会九段クリニック(東京都千代田区)では、通常の診断のほかに、特定の疾病に関係する遺伝子を解析して疾病リストを探り「遺伝子ドック」を今年から開始した。患者の疾病リスクを把握し、生活習慣の改善を指導することによって疾病を未然に防ぐのが目的だ。同クリニックでは予病と未病の観点から患者個人に最もあった「テーラーメイドの医療」を目指している。同クリニックの阿部博幸理事長にその治療方針を聞いた。
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個人にマッチした医療を目指して |
「予防して病気にならないことが一番いいのですが、そのための一手段として食品による予防が重要になってきています。例えばがんでは、食事や喫煙との関連が指摘されていますが、こうしたところから正して行く必要があると思います。まさにニュートリショんは予防の基本といえます」(阿部理事長)。
これまでにサメ軟骨やフコイダンによる制がん治療、ピクノジェノールによる血管系疾患の改善、ムコ多糖タンパクによる動脈硬化抑制など、健康食品を治療に取り入れてきた経験から、「今後は予防を中心にした医療体系を構築する必要性がある」と阿部理事長は指摘する。
「食品による効果は、その客観性や再現性といった科学性が問題にされていますが、すべての人に同様な効果があるという訳ではありません。これは医薬品も同じです。個体はそろぞれに違うのです。したがってその人にあった治療法を見つけなくてはいけないのです。すなわち個人にマッチした“テーラーメイドの医療”が必要なのです。医療は集団を見るのではなく、個々を見るべきで、テーラーメイドの医療とは個々に面接し、検査して治療していくことです」(阿部理事長)。
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遺伝子ドックで疾病リスクを判断 |
疾病予防のための方法として、同クリニックで開始したのが遺伝子解析により発症前に診断を行う「遺伝子ドック」だ。
疾病の要因には、遺伝的な体質と環境的な要因、生活習慣などの因子があり、生活習慣病などではこれらが相互に関連して発症する。特定の疾病に関与する患者の遺伝的な体質を知り、疾病リスクを軽減することがこの検査の目的だという。
これまでに遺伝子ドックを受診した患者の受診理由は、環境の影響による肺がんの心配から、家系に心臓疾患が多い、アルツハイマー症ではないかといった様々な不安を抱えた人が訪れているといる。
「思ったよりも反応が大きいという監視がします。遺伝子ドックでは、肺がん、食道がん、高血圧、心筋梗塞、心臓肥大、動脈硬化、肥満、骨粗鬆症、アルツハイマー症などのほか、人によって薬物効果の違いがわかる薬物代謝の機能について調べることができます。遺伝子を調べるということで当初は、怖い、危ないのではと不安を抱く受診者が多かったのですが、病気を予防するためには体質を診ることが必要ということを説明して、本人に理解していただきました」(阿部理事長)。
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検査前のカウンセリングを重視 |
体質を診るという点では、遺伝子は客観性があり、患者本人にも分りやすい。その後の指導にも効果的だ。この手法が広がれば、遺伝子の危険因子を率先的に診ることによって、発症の可能性がある人にあった予防を行うことができ、医療費の軽減にもつながる。またリスクを知って早期に治療ができるメリットのほかに、検査によって遺伝子リスクがないと分れば、患者の不安を解消できる。
「そのために検査する前のカウンセリングがとても重要です。もし遺伝子リスクが判明した場合には、生活習慣の改善の必要を説明します。そうすることで患者は積極的に行動します。例えば、肺がんリスクのある人は喫煙を控えるようになります。また肺がんの検査を継続していく必要も説明します。検査によって早期に発見できるかも知れません」(阿部理事長)。
これまでに、肥満、高血圧、食道がんなどのリスクが判明した例があるという。しかし、疾病予防を目的とした遺伝子検査を今後普及して行くには倫理上の問題がある。検査の前後に充分なカウンセリングを行い、患者本人の理解を得ること。そして秘密の保持。本人の承諾なしに他の遺伝子を調べないなど。こうした点を踏まえた上で、臨床を慎重に積み上げて行くことが重要となる。
「遺伝子のリスクだけで病気になるわけではなく、ここからが予防のスタートとなるわけですから、できれば若い方にも遺伝子ドックを受けていただきたい。誰にでも疾病リスクはあります。その人の遺伝子リスクのレベルは様々です。自分の疾病リスクを知り、それをうまくコントロールして行くことが、生活習慣の改善であり、生活習慣病などの予防に必要なのです」(阿部理事長)。
プロフィール
安部博幸(あべ ひろゆき) 1938年北海道生まれ。1964年札幌医科大学を卒業。慶應義塾大学付属病院にてインターン終了後、米国に留学。米国クリーブランドクリニックにてレジデントを修了。順天堂大学講師、日本大学助教授、米国スタンフォード大学客員教授を経て、現在、杏林大学客員教授。日本循環器学会専門医、日本冠疾患学会会長を歴任。米国心臓学会のフェロー(FACC)、日本人類遺伝学会会員。現在、医療法人社団博心厚生会九段クリニック理事長を努めている。 ●医療法人社団 博心厚生会 九段クリニック 東京都千代田区九段北1-9-5 TEL:03-3222-0071 |
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(Medical Nutrition 9号より)
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